【取材】創業100周年。包装用品の老舗「シモジマ」環境への取り組みとは
2020年1月に、創業100周年を迎えた株式会社シモジマ。
全国各地に店舗を構えつつも、本社を置く浅草橋に根差した企業です。
シモジマといえば、包装資材を展開する先駆けとなった老舗企業。
卸売業、メーカー業、小売業の3つを担う特殊な業態が強みとなっています。
私たちの日常にも欠かせない包装用品ですが、近年さまざまな環境問題が浮上しているのも現状です。包装資材を取り扱う企業の責任として、シモジマの今後の課題としても取り上げられているとのこと。
シモジマはどのようにして環境問題に向き合っているのか?
今回は、シモジマが取り組む “エコ” や “環境問題” を意識した4つのプロジェクトについて、お話を伺いました。
目次
「クローズド・リサイクル」~使用済み段ボールから紙袋へ~
――「クローズド・リサイクル」とはどのような取り組みですか?
クローズド・リサイクルは、2022年6月から始めた “循環型リサイクルモデル” です。
シモジマ本社や配送センター、都内5店舗から出た段ボールをすべて回収し、丸紅グループさんや紙製品加工会社のヘイコーパックさんと協力して紙袋や宅配袋に再生しています。
一度使った資源を埋め立てや焼却などですぐに製品寿命を終わらせるのではなく、もう一度違う製品として生まれ変わらせたうえで、再利用する。シモジマの新しいリサイクルシステムになっています。
これまで「他の場所で出た古紙を使って紙袋を作ること」や「段ボールから段ボールに変える」といった取り組みはしてきましたが、シモジマから出た古紙を使って当初の形とは違った製品にするというのは、初の試みです。
この紙袋はシモジマの店舗で購入可能なので、お客様も実際に手に取ることができます。
また、シモジマオンラインショップ用の出荷資材の一部に、クローズド・リサイクルで再生した宅配袋を使用しています。
――クローズド・リサイクルのポイントについて教えてください。
この取り組みのポイントは、段ボールよりも “消費者に近いモノ” に生まれ変わらせることで、お客様にもエコな取り組みを身近に感じていただけることです。
コストでいうと、段ボールから段ボールに変えるよりも高くはなってしまいますが、より有意義な環境への取り組みとしてこの活動を広めていきたいと思っております。
もし記事を読んでこの取り組みに興味を持ってくださるお客様がいらっしゃれば、お気軽にご相談ください。
資源回収の流れを一から構築するのは難しいことのように捉えられるかもしれませんが、実は “携帯の機種変更” のような感覚で簡単にクローズド・リサイクルを実現可能です。
“自社で出た段ボールがショッパーに生まれ変わる” といったイメージで、環境への取り組みをアピールすることができます。
クローズド・リサイクルは、こんな風にお客様を巻き込みながら認知を拡大していきたいと考えている取り組みです。
当社が軸となり、さまざまな方面に取り組みの輪を広げていけたらうれしく思います。
「KOSHIEN “eco” Challenge」~プラスチックカップをごみ袋に~
――「KOSHIEN “eco” Challenge」はどのような取り組みですか?
「KOSHIEN “eco” Challenge」は2022年4月より開始した、阪神甲子園球場における環境保全プロジェクトです。
こちらはシモジマが阪神タイガースのレギュラーパートナーであることがきっかけで始まった取り組みです。
阪神電気鉄道株式会社と同プロジェクトの協賛企業とともに、阪神甲子園球場で回収したプラスチックカップの再生原料を一部使用して作られる「リサイクルごみ袋」を開発し、“循環型リサイクル” の仕組みを構築しました。
――この取り組みの特徴を教えてください。
こちらのリサイクルごみ袋は、阪神甲子園球場で回収されたプラスチックカップを含む65%の再生原料を使用しているうえ、通常のポリ袋に比べてCO2排出量を約15%削減可能である点が特徴です。環境に配慮した商品になっています。
またこちらの取り組みに関しても「シモジマだけで商品を作りました」ではなく、「こういった取り組みができるので、みなさんも一緒にやっていきませんか」と呼びかけることで、“取り組みの輪” を広げるような動きをしています。
現在は阪神甲子園球場だけでなく、少しずつ輪を広げていくことを目標に、他の自治体や施設に向けて活動を続けています。
「シモジマ FOR more trees」~森林保全活動を支援~
――続いて、「シモジマ FOR more trees」についてお聞かせください。
2022年9月より、一般社団法人「more trees(モア・トゥリーズ)」さんの活動に賛同し、森林保全活動に役立てていただけるように寄付を始めました。
主に包装資材を取り扱う当社は、どうしても資源を使っていく立場にあたってしまいます。資源を使った分や有料化に伴いお客様からいただく袋代などは、資源の元となる “自然” に還元しなければならないとの考えでおります。
この取り組みの第1号として、more treesさんに紹介していただいた企業のショッパーを、当社が担当しました。
紙袋のブランドロゴ下に「FOR more trees」のロゴが入るため、「森林保全活動に賛同しています」というメッセージをお客様に伝えることができます。
また、持ち手部分も含めてすべて紙素材で作られているので、自治体によっては資源ごみとして回収できるのが特徴です。しかし中には、そうした事実を知らないお客様もいらっしゃると思うので、紙袋の底面にメッセージを入れて「資源ごみになるかもしれませんよ」というのをさりげなく呼びかけています。
製品を通じて、消費者の方たちに “資源の正しい終わらせ方” について意識していただけたらうれしく思います。
「ENER FISH」~海のプラスチックごみから魚を救う~
――今後力を入れて売り出していきたい商品はありますか?
はい。2022年12月より販売が開始されたばかりの海洋生分解性の「ENER FISH(エネルフィッシュ)」を紹介させてください。
こちらは洗足学園高等学校の生徒さん考案のアイデアをシモジマが商品化した、環境問題対策の一躍を担う商品です。
――どのような特徴があるのでしょうか?
この商品には2つの大きな特徴があります。
1つは、万が一海に流れ出てしまっても約1年で水と二酸化炭素に分解される点です。
通常のレジ袋は河川から海へと流れ、海に溶け出すまでに10~20年以上かかるといわれており、海洋汚染や、海洋生物に袋が絡まってしまう事故などが環境問題として挙げられています。エネルフィッシュの導入によって、そうした問題の発生を軽減することが可能となります。
もう1つは魚の誤食を防ぐための対策として、世界一苦いといわれる「デナトニウム」を配合して作られている点です。
魚たちのプラスチックごみの誤食により、それを食べる人間への健康被害も懸念されていますが、ごみ袋に苦み成分を配合することで、魚が誤って飲み込むリスクを低減しています。
――画期的なレジ袋ですね!これはいち早く全国に広まってほしいのではないでしょうか。
海洋ごみ問題を解決するための第一歩として、この商品を拡大していかなければならないと思います。ごみを焼却する日本ではごみを仕分ける際、ごみ袋は必ず使用するものです。
しかし残念ながら、河川を通してごみ袋が海に流れ出てしまうこともあるので、万が一海洋に流れ出てしまったとしても、早い段階で分解される存在でなければいけないと考えます。
ただ、コスト面では従来のレジ袋より高くなってしまうので、まずは「海を大切にしたい」という方の中から徐々に広めていけたらと思います。
関西の釣具店「フィッシングマックス」さんでは、すでに全店でエネルフィッシュをレジ袋として導入していただいており、YouTubeで宣伝もしてくださっています。
台東区では、シモジマ浅草橋本店とかっぱ橋店でも販売されていますので、ぜひ手に取ってみてください。
――本日はありがとうございました。
まとめ
今回の取材では、包装用品の老舗「シモジマ」の環境問題への取り組みについてお伺いしました。
どれもシモジマ1社だけで取り組むのではなく、他の企業とのコラボレーションでさまざまな活動を実現されている点がとても印象的でした。
消費者である私たちも日頃から環境に関する情報を敏感にとらえ、一人ひとりが環境問題に対する意識を持ち、できることから取り組むことで企業の応援にもつながるでしょう。
ぜひこの機会に、シモジマが展開するエコな商品を探しに行ってみませんか?
シモジマの店舗紹介(台東区内)
シモジマ浅草橋本店
住所:東京都台東区浅草橋1-30-10
アクセス:JR総武線 浅草橋駅 東口 都営浅草線 浅草橋駅 A4出口
営業時間:月~土 9:30~19:00
日・祝 10:00~17:30
定休日:不定休
電話番号:03-3863-5501
シモジマかっぱ橋店
住所:東京都台東区西浅草3-7-5
アクセス:東京メトロ銀座線 田原町駅 徒歩8分
東京メトロ日比谷線 入谷駅 徒歩10分
都営浅草線・東武スカイツリーライン(伊勢崎線) 浅草駅 徒歩15分
つくばエクスプレス 浅草駅 徒歩4分
営業時間:9:00~17:30
定休日:不定休
電話番号:03-3843-2341
シモジマ ラッピング倶楽部浅草橋店
住所:東京都台東区浅草橋1-18-10
アクセス:JR総武線 浅草橋駅 東口
都営浅草線 浅草橋駅 A3出口
営業時間:月~土 10:30~18:30
日・祝 10:30~17:30
定休日:不定休
電話番号:03-3864-1226
※サムネイル画像:シモジマ本社(筆者撮影)