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柳美里『JR上野駅公園口』ゆかりの地「上野公園」をめぐる旅

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皆さんこんにちは!最近読書がはかどるよしたにです。

ライターという仕事をしていると、さまざまな本を読む機会があります。

図書館に行って興味のある本を探したり、本屋さんでボーッと背表紙を眺めたり…なかなか楽しいものですよね。

そんな私が最近購入したのが、柳美里『JR上野駅公園口』。

訳書『TOKYO UENO STATION』が全米図書賞を獲得した、話題の小説です。

出稼ぎのため、初めての東京オリンピックの前年である1963年に上野駅へと降り立った、福島県南相馬市出身のある男性の物語です。

作中ではホームレスに関する場面が多く、物語の主人公もまた、路上生活を送っています。

彼らが生活の拠点としていた上野公園を、作品に沿ってめぐってみましょう!

ぜひ、最後までお読みください。




西郷隆盛像と彰義隊の墓

まずやってきたのは、西郷隆盛像。

快晴の上野公園には観光客がかなり戻っていて、私もこの場所で学校の先生と生徒と思われるグループに記念写真の撮影を頼まれました。

学生さんの数も多かったことを考えると、少しずつ校外学習も復活しているのかもしれませんね。

さて、西郷さんを久しぶりにまじまじと見つめます。

小説に登場するインテリ風のホームレス「シゲちゃん」は、上野公園にある構造物や歴史について非常に詳しい登場人物です。

西郷隆盛像は、西南戦争で自決後に戦犯とされた西郷が後に許され、天皇から官位を与えられたことに感動した友人らが寄進したものなのだとか。

その西郷隆盛像のすぐ裏にあるのが、彰義隊の墓。

彰義隊は、明治新政府軍と江戸幕府軍の残党が戦った戊辰戦争中に結成された、江戸幕府の有志による軍隊です。

シゲちゃんは「明治維新を主導した西郷さんの裏に幕府のために戦って散った彰義隊の墓があるなんて、おかしな話ですよ」と語っています。

まさに、おっしゃる通りですよね…

これまで何度も通っていた上野公園も、見方を変えると大きな矛盾に包まれていることを感じます。

そもそも、日常的に殺戮や戦闘が繰り返されていた幕末や戦国時代を過度に称賛する現代の風潮に、強い違和感を感じている私。

いくらその時代を扱ったゲームやアニメが素晴らしくても、人物がカッコ良くデザインされていても、客観的に見ればたくさんの人々を殺した人物のお話ですよね。

そういえば、「歴史は、人が殺し合っている時が一番面白いんだよ」と高校の日本史の先生がよく話していました。

その言葉が、歳をとるごとに重みを増していきます。

時忘れじの塔と東京文化会館

さらに歩いてたどり着いたのが、「時忘れじの塔」。

関東大震災の際、上野一帯も大きな被害を受けました。

作中では、主人公が福島県の相馬出身であることをシゲちゃんに明かし、当時相馬付近にあった無線塔が関東大震災の発生を全世界に発信したことを話しています。

時忘れじの塔は、戦中にあった東京大空襲も含め、平和への祈りを込めて建てられた塔です。

寄進者のひとりは、先日まで笑点の大喜利でレギュラーを務めていた林家三平師匠のお母さまである海老名香葉子さん。

平和への祈りが、何代にも続いていくことを願ってやみません。

さらに進むと、東京文化会館の裏に出ました。

同会館を拠点にしている、東京都交響楽団のオケトラが止まっていますね。

小説では、東京都文化会館のレストランが余った食事などをホームレスの方々に提供している場面が紹介されているほか、主人公がこの付近である偉大な人物と遭遇する場面が描かれます。

現在、上野駅公園口は見違えるほどきれいに整備され、改札付近に彼らの姿を見ることはありません。

摺鉢山古墳跡

最後に訪れたのは、摺鉢山古墳跡。

主人公やシゲちゃんはこの山の裏に「コヤ」と呼ばれる建物を建て、生活の拠点としていました。

弥生式土器や埴輪の破片などが出土したことから前方後円墳の一部と考えられており、現在は古墳の上に休憩できるベンチが多数設置されています。

登ってベンチに腰を下ろすと、心地よい木漏れ日と小鳥たちの鳴き声が響き渡っていました。

ここにも「コヤ」はありませんが、ある一角だけ規制線が貼られており、その奥にブルーシートが少し覗いています。

世の中には、自分が想像しきれない経験をしている人がたくさんいるものです。

ライターとして、知ったかぶりと決めつけ、そして憶測でモノを言うことだけは絶対にしてはならないと思っています。

それでも、わからないなりにわかろうと努めたいのが私なのです。

さまざまな思いを頭に浮かべながら、摺鉢山を後にしました。




まとめ

上野公園を、今までとまったく異なる視点でめぐってみました。

作中に漂うパラドックス、やり場のない気持ち、悲しみ…そして感動。

さまざまな感情を、一気に感じることができたのではないかと思います。

何度も上野公園に来ているのに、今回初めて回った場所もたくさんありました。

これからも、さまざまな視点で台東区をじっくりと見ていきたいなと思います。

この記事で少しでも『JR上野駅公園口』に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ読んでみてくださいね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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ライター紹介

よしたに

フォトライター

鉄道ライターとして、デアゴスティーニ『JR全路線DVDコレクション』や『鉄道ジャーナル』など、鉄道雑誌やWebメディアへの記事掲載多数。 台東区を歩いて感じながら、皆さんと台東区を楽しみたいと思っています。 趣味はクラシック音楽鑑賞や料理、野鳥観察などです。
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