9社寺まわってご利益をGET。「浅草名所(などころ)七福神巡り」の歴史探訪レポ①吉原神社

吉原神社
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浅草には、古来より縁起がいいとされる9つの社寺からなる「七福神巡り」があることをご存じでしょうか?

浅草のある東京も、かつては江戸と呼ばれていましたが、その江戸も比較的新しい首都でした。

長かった戦乱の世が終わり、日本の中心が江戸に移されるようになると、庶民のあいだで観光と神仏詣でを兼ねた行楽文化が花咲きました。

そうして江戸末期には、商売繫盛、無病息災、各種大願成就の福徳、福運を求めて、各地で七福神詣でが隆盛を極め、特に正月松の内に巡拝して一年の福徳を願うようになったのです。


こうして、浅草でも9社寺からなる七福神の名所を信仰するようになり、「浅草名所七福神巡り」として今日まで受け継がれていきました。

七福神にはそれぞれご利益があるので、この9社寺を巡拝すると運気が上がるのだとか。

今年こそはもっともっとああなりたい、こうなりたい。
今よりもっと良い状況を願うのは、人間なら誰しもそうですよね。


そこで「irohaめぐり」では、「浅草名所七福神」の9社寺に残る江戸の面影を探りながら、七福神のパワーを貰いつつ、見どころを紹介していきたいと思います。



まず最初は、9社寺の一つである「吉原神社」へ向かいます。

「浅草名所七福神」は巡拝の順番は特に決まっていないので、行きたい社寺から始めてOK。
徒歩でおおむね4時間ほど、約8キロの半日コースになるので、浅草の観光を兼ねてゆっくり巡るのがおすすめです。


さて、記念すべき最初に訪れる「吉原神社」までは、東京メトロ三ノ輪駅から徒歩で15分ほど。

かつて江戸で栄えた花街である、あの吉原のど真ん中にあるというこの神社。

駅から出て左、スカイツリーが目の前に飛び込んできます。その通りをまっすぐ行くと、かつての日本最大遊郭・吉原にたどり着きます。

初冬の空気が澄み切った晴日。一層美しく映えるスカイツリーをまっすぐに目指し、ぐんぐん歩き進めていきます。

吉原の入り口に差し掛かると、かつての街の雰囲気を残している馬肉鍋のお店と天ぷら屋さんの看板が見えます。

「桜なべ 中江」さんは創業明治38年、「土手の伊勢屋」さんは創業明治22年、ともに百数十年の長い歴史のある飲食店で、かつて賑わっていた頃の吉原の雰囲気を彷彿とさせますね。

駅から歩いて10分ほど、吉原の入り口に到着。すぐ傍にはガソリンスタンドがあります。

ここからS字にくねった道を渡ると、吉原へ遊びに来た、たくさんの客を迎え入れていた「吉原大門」にたどり着きました。この道を「五十間道」というそう。

「五十間道」の手前、大通りの入り口の辺りを「衣紋坂」と呼びます。

その由来は、吉原に向かう客が登楼前に着物の襟を正して身なりを整えたことともいわれています。

「五十間道」の終わりで振り返ると、先ほどの大通りの入り口からすっかり見えなくなっていることに気づきます。遊郭の様子を外から見られないように、ということですね。


かつては栄えていた吉原ですが、現在その名はほとんど使われていません。

江戸幕府公認の遊郭であったこの街も、戦後には公娼廃止などにより営業形態の変更などを余儀なくされました。

とはいえ、街はいまだに夜の歓楽街として機能しています。


しかし、吉原神社の近くには区立台東病院や公園、保育園もあり、近所の主婦や中高生、小さな子供まで、この通りを普通に行き交っています。
なんとも不思議な光景です。

さて、そんな日常と非日常が交じる吉原の昼時、大通りの入り口からしばらく歩くこと5分、やっと「吉原神社」に着きました。

吉原の遊女たちの信仰を集めていた「吉原神社」は、かつて大門の手前と郭内にあった5つの稲荷神社と吉原弁財天を合祀した神社です。

ここで祀られている七福神・「弁財天」は、古代インドのサラスパティという名の豊かな川の女神で、【知恵、技芸、財物】にご利益があると言われています。(「弁財天」の正式名称は「弁才天」で、「才」は才能を意味するもの。)

特に、悪声を川のせせらぎのような美声に変える神徳があると信じられ、別名を「妙音天」ともいいます。

教養が高いことを求められ、自らの運命から逃げ出すことのできない吉原の遊女たちにとって、願い事を叶えてくれるとされた弁財天様は、どれほど尊い存在だったでしょうか。

境内の中には「お穴様」と呼ばれる神様が祀られていました。この「吉原神社」の土地を守る神様で、心を込めてお参りすれば必ず福が得られるとのこと。


また、入り口の鳥居の横には、遊郭に来た客との多くの出会いを願う「逢初桜」(あいぞめざくら)が植樹されています。
「逢初め」とは恋い焦がれている人に初めて会うという意味。桜の季節になると桃色の花が神社を彩ります。

筆者には、ここへ実際に訪れるまで、抱いていた疑問がありました。 吉原という、いまだに一般人には踏み込みにくい街のど真ん中で、参拝しに訪れる人間、ましてや観光客なんているのだろうかと。

ですが、筆者が境内であれこれしているあいだにも、わざわざ車に乗ってきた人、何かのついでに来た地元らしき人など、何人かが参拝に訪れていました。

やはり、観光面で公式的に参拝コースとして紹介されているので、観光客も多く、意外にも女性たちも訪れるのだとか。

せっかくの七福神巡りということなので、御朱印も頂きました。初穂料は500円。

「弁財天」は古代インドにおける川の神(水神)だったことから、川の流れのイメージとインド古来の蛇・龍信仰とも相まって、神使は「蛇」や「龍」だとされています。

その神様が祀られていることから、蛇の模様が描かれていますね。


ところで、今回「吉原神社」を訪れるということを決めてから、筆者がしたいと思っていたことがありました。
それは、当時の吉原を感じられる場所がまだあれば、見てみたいということ。

吉原は、かつて四方をお堀で取り囲まれていました。「お歯黒どぶ」と呼ばれるそのお堀は、5間(約9m)もの幅があり、汚水が流れていて、遊女の逃亡を防ぐ役割もありました。

なんでも、その「お歯黒どぶ」の跡がまだ残っているらしいのです。

御朱印を頂いたついでに授与所の方に「お歯黒どぶ」の場所を聞いてみたところ、どうやら吉原大門の入り口近く、交番の裏の方にあるのだとか。

大門の方へ引き返し、交番の辺りをさまよっていると、半信半疑ながらそれらしき石垣がありました。

マンションの階段に埋められ、「お歯黒どぶ」の史蹟の一部が顔を覗かせています。

案内板などはなく、住宅街にひっそりと溶け込み、静かに佇んでいました。

また、すぐ近くの吉原公園の階段にも「お歯黒どぶ」の跡があります。先ほどの石垣の真横からまっすぐ直線上の場所です。

石垣自体はありませんが、溝があったこの階段の高さや深さから、当時の面影を感じ取ることができますね。

吉原公園自体は、もともと吉原の三大妓楼の一つ、「大文字楼」が建っていた場所なのだとか。

昔の遊女たちは、この溝を越えて、外の世界に出たいと何度思ったことでしょう。



吉原の入り口「大門」を過ぎ、最初にたどり着いた「衣紋坂」まで引き返してきました。

かつて、吉原の入り口は「大門」一つのみ。遊郭の客たちも、この門をくぐり、そして帰っていったのです。

その情緒をいまだに残すものが「見返り柳」です。

今はガソリンスタンドが建つ道の入り口にある柳の木が、吉原の名所として有名な「見返り柳」。

吉原で遊んだお客たちが、このあたりで後ろ髪を引かれる思いで遊郭を振り返ったことから名付けられたといいます。

当時は山谷堀脇の土手にありましたが、区画整理によりこの地に移され、また、震災や戦災による焼失によって何度か植え替えられているそうです。

多くの時代とその変化を乗り越えて、今なお吉原のシンボルとして飾られている「見返り柳」。

吉原自体も、着飾った遊女たちも今とは姿を変えているのに、当時の人々の情緒を残そうとしている方々がいる。

日本人の情緒と伝統を重んじる心が、ここにも反映されていると感じました。

さて、ここまで現在に残る吉原の街と「吉原神社」のご紹介をさせて頂きました。

吉原には、外の世界を再び見ることなく世を去った遊女も多くいたことでしょう。それを思うと、遊郭と外界を繋ぐ唯一の大門や、その先にあった深い溝が、遊女にとってどんな存在だったのかを考えずにはいられません。

色々な事情で幼少から連れてこられ、年季を終えるまで出ることができない。そんな中で、必死に生きていた遊女たちに信仰されていた「吉原神社」は、芸術・開運・財宝・女性に関わる願い事などにご利益があり、今日には多くの観光客も訪れます。

そして、ここのエリアにはまだ「浅草名所七福神巡り」の巡拝コースが残っています。

「吉原神社」から歩いてすぐの距離にある「鷲神社」は、全国的な「酉の市」の由来でもあり、古くから江戸の人々より「おとりさま」と呼ばれ親しまれてきました。

「鷲神社」の歴史探訪・見どころについてはこちらから

ぜひ、皆さんも遊女たちの逞しく生きていた姿を思い浮かべながら、参拝ついでにこの付近を散策してみてはいかがでしょうか。

神社案内

「吉原神社」
住所:東京都台東区千束3-20-2
時間:9:30~16:30
アクセス:日比谷線三ノ輪駅より徒歩15分
公式HP


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ライター紹介

くまりら

インタビュアー、ライター

93年生。縁あって、前職では有名少年漫画作品の編集をいくつか担当。 歴史ロマンのあるもの、美味しい食べ物、韓国アイドル、エンタメが好き。
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