【浅茅ヶ原の鬼婆伝説】花川戸公園の姥ヶ池跡を歩こう

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こんにちは、とくらです。

まだまだ暑い日が続きますが、夏は既に終わりに近づいています。

しかし、まだまだ怪談話をしていたい私としては、夏に名残惜しさを感じざるを得ません。

さて、今回はこんな残暑厳しいこの季節にぴったりのお話を一つご紹介します。




浅茅ヶ原の鬼婆

浅草寺から少し歩いた場所にある、台東区花川戸公園内の端に姥ヶ池跡という碑が建っています。

明治24年に埋め立てられるまで、非常に大きな池が広がっていた場所です。

この場所にはこんなお話が伝えられています。

浅草寺が創建された頃、1400年程前のお話です。

見渡す限り草の生い茂る、広い野原の中に、一軒のあばら家が建っていました。

そこでは、老婆とその娘の二人が暮らしておりました。

二人が住む一軒家は、陸奥国や下総国を結ぶ唯一の小道の近く、他に人が暮らさぬ土地に建っています。

そのため、旅人たちは宿を求めてこの老婆の家に訪れ、決まって老婆は快く寝床を貸すのでした。

しかし、旅人が寝床に着くと、なんと老婆は大きな石で旅人の頭を叩き割り、金品を奪って亡骸を近くの池に捨てるという鬼婆だったのです。

娘は何度もこんなことはやめるようにと頼みますが、老婆が娘の話を聞き入れることはありません。

そして遂に、老婆が殺めた旅人の数が999人に達した時、一人の旅の稚児が宿を借りに訪れます。

この日も老婆は稚児に寝床を用意し、そこで寝るようにと案内しました。

そして、いつものように寝入った稚児の頭を大石で叩き割るのです。

寝床の亡骸の顔を確認した老婆は驚きます。

そこに横たわっていたのは自分の娘だったからです。

なんと、娘は稚児に変装して入れ替わり、自分の命をもって母に改心をして欲しいと願っていたのです。

老婆は酷く後悔しましたが、自分の手で娘の頭を叩き割ってしまった今となっては、もはやどうすることもできません。

今までの悪行を悔いても娘は戻ってこないのです。

そこに、宿を借りに来ていた稚児が現れました。

実は、稚児は浅草寺の観音菩薩の化身で、老婆に正しい道を歩ませるために稚児の姿で家を訪れたのです。

その後、老婆は観音菩薩の力で竜となり娘の亡骸を抱いて池に姿を消したとも、観音菩薩が娘の亡骸とともに消えてしまった後に池に身を投げたとも、仏門に入り死者を弔ったとも伝えられています。

鬼婆が身を投げたとされる池は姥ヶ池と呼ばれ、現在では花川戸公園内の端「姥ヶ池跡」に伝承を記した碑が残されています。

999人もの旅人を殺めた母を改心させたいと想う娘の気持ちを思うと悲しい物語です。

現在は姥ヶ池のほとんどが埋め立てられていますが、今でもここには旅人と娘が眠っているのかもしれません。

花川戸公園「姥ヶ池跡」

花川戸公園は浅草寺近くにある児童公園です。

現在では大きな遊具・アスレチックも設置されており、子どもたちにも大人気の公園となっています。

大きなアスレチックには、滑り台やお砂場、ブランコもついており、小さなお子さんも楽しめそうですね。

また、スポーツ広場というサッカーやテニスなどができる柵で囲われたスポーツコーナーも。

7時~19時の間で使用できる年齢が区切られているため、安心してスポーツを楽しむことができます。

公園内には助六歌碑という九世市川團十郎が歌った助六の碑も。

こちらもチェックしておきたいですね。

また、12月には履物問屋街が行う「花川戸はきだおれ市」というバーゲンが開催されることでも知られています。

靴など、履きものが大幅に値下げされたり、衣類やアクセサリーなどもお買い得で、これは見逃せないイベントです。

履物・衣類だけでなく、文房具なども並ぶため、新年に向けてぜひ掘り出し物を探したいですね…!!

花川戸公園には姥ヶ池跡だけではなく、「履物問屋街発祥の碑」もあることから、はきだおれ市が行われているようです。

公園内だけでなく、問屋街の店頭でも開催されるため、街中がちょっとしたお祭りムードに。

浅草寺から徒歩で訪れることができるので、人混みや観光に疲れたら公園でホッと一息ついても良いかもしれませんね。

花川戸公園
住所:台東区花川戸2丁目4−15





まとめ

よく考えたら、公園の下に老婆の被害者1000人が眠っていると考えると恐ろしすぎて遊んでる場合ではなくなりそうなお話でしたが、似たような伝承は多くの土地に残っているので、当時は実際にこういった追いはぎじみた被害が多く存在していたのかもしれませんね。

以前、鬼子母神についてもご紹介しましたが「母である鬼が子を失って改心する」というお話はなんだか悲しいものです。

当然旅人を殺めて生計をたてる行為は許されないことではありますが、そこに至るまでに老婆にもきっと様々な苦労・葛藤があったに違いありません。

もし、この老婆と娘に適切な救済手段があったとすれば、娘がこんなにも悲しい最期を迎えることはなかったかもしれませんね。

遊具で遊ぶ子どもたちの笑顔を見て、老婆は何を想うのでしょうか。

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ライター紹介

とくらじゅん

イラストレーター・ライター

1991年生まれ。下町暮らしのフリーライター・イラストレーター。 妖怪イラスト、育児漫画、ADHDエッセイなどを書いています。
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