思わず唸る、孤独のグルメに登場した極上のカツサンド。多彩なメニューで魅了する浅草橋の居酒屋「まめぞ」にインタビュー

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おかず横丁の人気居酒屋「まめぞ」のオーナー、中尾さん

東京きっての下町・浅草橋と蔵前。
その周辺の鳥越というエリアにある「おかず横丁」は、歴史ある鳥越神社の目と鼻の先にあり、200mもの通りにお惣菜や食料品店が並ぶ商店街。昭和の時代にタイムスリップしたような、戦前・戦後の風情がそのままに残っているエリアです。

昔から、このあたりはものづくりの町として小さな工場が多かったため、朝から晩まで忙しく働いていた人たちが「白いご飯だけ炊けば」おいしいおかずが食べられるとして、「おかずを求めて」集まり、「おかず横丁」として形成されていきました。

そんな、美味しいおかずが並ぶ商店街に店を構える居酒屋「まめぞ」は、人気グルメ漫画原作のドラマ「孤独のグルメ」でも登場した、注目の居酒屋さん。
和食にフレンチ、中華など、さまざまなジャンルの居酒屋メニューがお客を魅了する中、名物の「カツサンド」が人気のお店です。


今回は、そんな「まめぞ」を営むオーナー・中尾さんにお話を伺うことができました。

 

お酒に合わせてどんなアテがいいと思うか。後付け後付けで考えたメニュー

御徒町や蔵前といった下町の、ちょうど中心にある鳥越エリア。
蔵前橋通りと清洲橋通りをつなぐ小さな商店街・おかず横丁の、ひときわモダンな建物の入り口に見える「ちいさな居酒や」という白い文字。
外観だけ見れば、居酒屋というより喫茶店のような雰囲気もあります。

居酒屋というと引き戸のイメージが強いが、これまたドアノブ式の扉を開けると、「まめぞ」オーナーの中尾さんが温かく出迎えてくれました。



店内の壁には手書きのメニュー表がびっしりと貼られており、どれも個性的なメニュー名でついつい目がいってしまいます。

店内入ってすぐのテーブル席はアットホーム感満載


店内には、鳥越神社の祭事の写真や授与物、猫モチーフのグッズがあふれている

 

筆者:
―「まめぞ」さんは、居酒屋なのに和洋折衷さまざまなお料理があるのが面白いですね。これほどまでレパートリーが多い料理を出せるわけは?

 中尾さん:
和洋中、色々なジャンルのデリバリーで転々と学んで、自然と料理の道に入っていきました。
 飲み物が中心なんですよ。日本酒があるでしょ、ビールもある、洋酒、シングルモルトなんかも置いてあるし、あとワインもあります。
そのお酒に合わせてどんなアテがいいと思うか。後付け後付けで考えていたらああいう風になっちゃった。
 だから時々、カオスじゃないけど、不協和音も起こるわけでございますよ。(笑)

筆者:
―人気ドラマ「孤独のグルメ」でお店が登場したのはシーズン4(第7話)でしたね。最後に原作者の方がお店へ足を運んで、メニュー選びに悩んでいましたが。これだけジャンルが豊富だと、お客さんがどれ頼もう?と迷いませんか。

中尾さん:

席が15しかないので、ランチだと2回転ちょっとの回転率ですが、平均30~40食分に対して10以上メニューがあります。
その日によって売れるものも売れないものも変わりますが、このランチのアイテム数があるおかげで、昼まである程度(食材)数がさばけて、仕込みもいろんなものができるようになっています。なので、夜もそういう(色んなジャンルのメニューの)提供ができてます。

筆者:
―お店に来るのは常連さんが多いですか。

中尾さん:
(新型コロナウイルス流行前だと)地元のお客さんは意外に少ない。周りに単身赴任者用のマンションがあったりして、そういう人が利用してくれることはよくあります。
 それとか、周辺で働いているサラリーマンの人たちが来たり。
 あとは観光客の皆さん。東京旅行でどこ行こうかってなった時、「孤独のグルメ」を観ていて、じゃあ東京来たら行ってみたいというお客さんが日本全国から結構いらっしゃいますね。


筆者:
―番組の影響は大きいですか。

中尾さん:
大きいですね。新型コロナウイルスで入国制限がされる前は、中国人・台湾人・韓国人…いっぱい来てましたよ。ポケトーク(翻訳機)買いました。


五郎さんも絶賛した極上の「カツサンド」を実食

筆者:
―「孤独のグルメ」で主人公・五郎さんが食べていた「カツサンド」が一番人気と聞いたのですが。

中尾さん:
うちには「ヒレ、ロース、メンチ」のカツサンド三兄弟がありますけど、やっぱり一番は「ロース」です。
見た目でボンっと出して、まず「シズル感(※)」じゃないけど、見て「わあ、すごい」、食べて「えっ」っていう感じを演出できるのがやっぱりロースなんですよ。

※英語の「sizzle」から。料理において揚げ物や肉が焼ける際の「ジュージュー」と音を立てるようす。瑞々しさや新鮮さを表現することば。


筆者:
―カツサンドの提供は夜のみだそうですが、理由はありますか?

中尾さん:
ランチは定食だから、1つのお皿にご飯と味噌汁がついているっていう1つのパターンができてるわけです。パスタに関してもですが、時間との勝負なので、そこにイレギュラーにカツサンドを入れるのはなかなか難しい。夜の場合だったら、お客さんの滞在時間が長いので全然問題ないわけです。
だから、平日ランチの時間に店内で食べることはできないんですが、テイクアウトにだったらできますよ。

というわけで、「孤独のグルメ」で主人公が食べた、あの「カツサンド」をお願いすることに。

厨房でカツサンドの調理にかかる中尾さん


10数分後、席に届いた「カツサンド」。
ピンクがかった肉とその厚み、食べる前から見て分かるこぼれそうなほどの脂の照り。揚げたてのカツだというのがわかります。


3~4センチはありそうな厚みたっぷりなカツは、持っただけでやわらかいのが分かる。食欲を誘う香りのソースが染み込んだパンに挟まれています。


一口頬張ると、あまりの美味しさにびっくり。

揚げたてサクッな部分とソースがたっぷり染み込んだやわ~な部分の衣。
かみ切れるほどやわらかいお肉の甘みに、酸味のあるソースが溶けあう。


これだけ厚さがあるのに、簡単にかみ切れるのにも驚きです。


ボリューミーなのに、なぜか重くない。
ふっくらやわらかいお肉に、酸味のあるソースが食欲を増すことで、より軽く食べれるのかもしれない。

劇中の五郎さんのように、ペロリと完食してしまいました。

タイミングが合えば会えるかも?人気の看板猫

多くの書籍にも載っている看板猫のこじろうくん、せんちゃん

筆者:
―お店のHPを見たのですが、看板猫がいるのですか。

中尾さん:
2匹いますよ。こじろうくん、せんちゃん。

壁に貼ってあるイラストとかは、お客さんがうちの猫を描いてもらって。お客さんがいっぱい入っている時は店に出さないけれど、今はこんな状況だから、夜も席でゴロゴロしていることもよくあります。猫効果でお店に来るお客さんもいますよ。


筆者:
―雑誌に取り上げられてるんですね。

中尾さん:
2~3年前には猫雑誌の「浅草の猫」特集の中で選ばれて、カレンダーになってます。
吉田類さんが監修している本とか、「週刊大衆」ならぬ「週ニャン大衆」とか。

看板猫特集の撮影でも堂々としているこじろうくん

お店で会えなくても、2匹が取り上げられた書籍はお店で読めます。


昔から猫がお好きだというオーナーの中尾さん。

壁には先代のこたろうくんや、お店に来た方のペットの猫たちの写真まで飾られ、ちょっとした猫カフェのような感じも。

地域としては、いろんなお店が出来始めて面白いことになっている

筆者:
―「まめぞ」というお店の名前の由来は

中尾さん:
二つ意味があって、一つは「マ・メゾン」。フランス語なんだけども、「我が家」って意味。
それから、もう一つが「まめぞう」。江戸時代というか古い言葉で、半人前を「おまめちゃん」っていいます。「お前、おまめだから」とかね。

そういう意味も込めて「まだまだ1人前じゃないから頑張りなさいよ」ってことで「マ・メゾン」と「まめぞう」をかけています。

ひらがな3文字っていうのは頭に入りやすいしね。


筆者:
―今、蔵前含めたこの辺りはすごく注目されていますよね。新しいのと古いのが混ざって、いろんな世代を取り込めそうだなあって。この地でお店を開いてみて感じることや、やりがいはありますか。

中尾さん:
うちは、飲食店としてはちょっと、この辺にないようなお店作りをしてると思います。昔ながらのお店と競争しようとはさらさら思っていないので。赤ちょうちんとか、居酒屋とかそういうような形のところとは競争しようとは思ってないです。

この「おかず横丁」自体はもう3~40年前まではたくさん人がいたけど、商売の形態が変わってきちゃったって感じます。
昔はこの辺りには職人さんが5人10人いて、その人たちのご飯の賄いをどうしようか、ご飯と味噌汁だけあれば、おかずはここの商店街へ買いにくれば足りたってことで隆盛していたから。
今はそういうのではなくなっているので、衰退していっちゃった。


筆者:
―やっぱり新しいことをやっていかないと、でしょうか。

中尾さん:
うちが12年前に来た時はもうちょっとお店もあったけれども、どんどん欠けていっちゃってね。
皆さん、お子さんが外に出て行っちゃって、仕事を継がなくなってしまったので。本当はこの商店街を維持しなくちゃいけないんだけど、昔のままでは絶対生き残れないので。

でも地域としては、ぽつぽついろんなお店が出来始めて、面白いことになってると思いますよ。

カチクラ(御徒町―蔵前)とか、モノマチ(※)なんかでもフードコートに参加させてもらってたり。五月の一番最後の週、鳥越のお祭りの一週間前くらい、その時にはここは結構賑わっていますよ。

この周辺はものづくりの工房がたくさんあるから、盛り上がっているのはいいことだと思います。

※台東区南部エリア《御徒町~蔵前~浅草橋にかけての2km四方の地域》を歩きながら、「町」と「モノづくり」の魅力に触れることのできるイベント


筆者:
―最後に、これから、どんなお店を目指したいかを聞かせてください

お客さんたちのオアシスではないけれども、気が休まるというか、あそこにいったら気がまぎれるというか。
発散できる場所であり続けることが大切なことなのかなと思います。


令和になったこの現代でもなお、人が行き交っていた昭和の名残がそのまま残されている、おかず横丁。

和食・洋食・中華、特に何が食べたいか決めていない時でも、おかず横丁の「まめぞ」へ立ち寄れば、必ず気に入るメニューが見つかることでしょう。

かしこまらず、気取らず、我が家のようなホッとする空間でありながら、確かな味を提供してくれる「まめぞ」には、お客さんの気が休まる、心を開放できる場所であり続けることが大切と語るオーナーの視点で、未来のこの町のあり方までもが視えました。


「孤独のグルメ」の劇中で描かれたように、「まめぞ」のカツサンドを一口でも頬張れば、間違いなく今までの人生で食べたカツサンドの歴史に「新しいページが開かれた」と感じるはず。


平日ランチタイムでは、店内ではカツサンドは食べれないものの、テイクアウトはOK。食べてみたい方は、ぜひ電話予約を。



まめぞ
住所:東京都台東区鳥越1-1-5
時間:〔ランチ〕火~金 11:30~14:00〔ディナー〕月~土18:00~22:00
定休日:日祝、土のみ不定休
アクセス:JR 浅草橋駅・都営浅草線 蔵前駅より徒歩7分
公式HP



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ライター紹介

くまりら

インタビュアー、ライター

93年生。縁あって、前職では有名少年漫画作品の編集をいくつか担当。 歴史ロマンのあるもの、美味しい食べ物、韓国アイドル、エンタメが好き。
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