この夏、藝大生になる——東京藝術大学大学美術館「藝大式 美術の”ミカタ”」開催

「美術って難しい」と感じたことはないでしょうか? この夏、上野の東京藝術大学大学美術館で、そんな先入観を覆す展覧会が開幕します。東京藝術大学の現役講師陣が考えた12コマの「講義」を、展示をとおして楽しめるユニークな展覧会です。
この夏は、藝大生になった気分でアートの世界に触れてみませんか。

「藝大式 美術の”ミカタ”」展とは?——東京藝大美術館が仕掛ける3年シリーズの第一弾

2026年から2028年にかけて毎夏開催される「藝大式 美術の”ミカタ”」シリーズ。その幕開けとなる第一回展が、2026年7月24日(金)から9月23日(水・祝)まで東京藝術大学大学美術館で開催されます。

小倉遊亀「径」1966年東京藝術大学蔵

本展では、「展覧会で大学の授業を『履修』する」というコンセプトで、東京藝術大学の現役講師陣が考案した12コマの「講義」を、美術館の展示室で「展覧会」として体験できるという、これまでにない試みです。「絵画基礎演習」「西洋美術史概説」といった科目名が掲げられた展示を、教材となる本物の芸術作品を鑑賞しながら「受講」していきます。
会場となる東京藝術大学大学美術館は、上野公園内の東京藝術大学の敷地内にあります。140年近い歴史を持つ国立の総合芸術大学のキャンパスを舞台に、コレクションの名品を間近で見つつ、大学の講義を体感することができます。

「ミカタ展」の見どころと楽しみ方をご紹介

① 「模写」「模刻」でわかる! プロが美術を学ぶ方法

藝大の美術の基礎ともいえる「模写」と「模刻」をテーマにした展示です。

1限目「絵画基礎演習」では、レンブラントの「トゥルプ博士の解剖講義」を模写した黒田清輝の作品が展示されます。また、現役生たちの模写の取り組みも展示されます。巨匠の筆跡をなぞることで、「美のこころ」がどう解釈されてきたかを読み解きます。

黒田清輝「トゥルプ博士の解剖講義」1888年東京藝術大学蔵
レンブラント・ファン・レイン原作

5限目では絵巻の模写の方法を学びます。「上げ写し」という技法を紹介し、学生たちによる研究成果の展示も予定されています。6限目「彫刻保存特殊講義」では、藝大コレクション屈指の名品・快慶の「大日如来坐像」(鎌倉時代)と、その模刻を並べて展示し、保存修復の現場で培われた観察眼や修復手法を学びます。

澤田かおり「「源氏物語絵巻」第五十帖東屋一模写」2008年東京藝術大学蔵
(左)快慶「大日如来坐像」鎌倉時代/12世紀末-13世紀初東京藝術大学蔵
(右)信太司「快慶作大日如来坐像による木彫仏像技法研究」1987年東京藝術大学蔵

② 名品で学ぶ日本洋画史・西洋美術史

次に、これまた美術を学ぶ際の基礎のひとつである美術史の講義です。

2限目「日本近代美術史概論」では、日本の洋画黎明期を彩る名作が揃います。原田直次郎「靴屋の親爺」(1886年・重要文化財)や和田英作「渡頭の夕暮」(1897年)など、工部美術学校から東京美術学校(現・藝大美術学部)への流れを作品で辿ります。

原田直次郎「靴屋の親爺」1886年東京藝術大学蔵

3限目では「西洋美術史概説Ⅲ」と題して、ラグーザ玉(清原玉)の生涯と画家としての歩みを辿ります。西洋のアカデミックな美術教育を受けた彼女が、どのようにイタリアや欧州の画壇で活躍していったのか、その作風の変遷から探ります。10限目「近現代作家論」では、生誕140年となる藤田嗣治の東京美術学校時代に焦点を当てます。天才と呼ばれた画家の、若き苦悩と努力の軌跡を一次資料と作品で読み解くことができます。

③ リサーチや最新技術を活用した研究の最前線

そして、現代の藝大生がどんな研究をしているのか、リサーチや最新技術について学びます。

8限目「クリエイティブ・アーカイブ演習」では、AI解析による鑑賞体験のアーカイブの研究成果を体験できます。鑑賞するってどういうことだろう?という問いに、AI技術を活用した研究で迫ります。
また、11限目「リサーチプロジェクト演習」では、20世紀初頭の中国からの留学生に注目した研究を紹介します。一人の留学生が起点となり、芸術活動を通じて広がる交流や歴史に目を向けます。現代のアーティストはリサーチを制作の中心に置くことも少なくありません。アーティストがどのような視点で歴史や社会を見つめ、作品へとつなげていくのか、その制作の一端を垣間見ることができるでしょう。

④ 子どもから大人まで楽しめる体験型展示&ワークショップ

美術の入口として特に親子連れにおすすめなのが7限目「特別鑑賞演習」。動物をモチーフにした作品が並ぶ部屋で、「かわいい」という素直な感情からスタートして美術鑑賞の第一歩を踏み出せます。

小倉遊亀「径」1966年東京藝術大学蔵
鍵野壮太「polka dots」2007年東京藝術大学蔵

また12限目では、ゴッホが実際に使用した版画プレス機が展示されます。なぜそれが藝大にあるのか、その謎を解き明かしながら西洋・日本の銅版画の歴史を学ぶ展示も見逃せません。

フィンセント・ファン・ゴッホ「ガッシェ博士の肖像」1890年東京藝術大学蔵
版画印刷機18世紀初頃東京藝術大学蔵

大学の講義がテーマとなっていますが、大人から子供まで楽しめるよう工夫されています。講師陣によるワークショップも予定されており、美術に親しむきっかけづくりにもなりそうです。

「ミカタ展」を楽しむためのポイントお得なチケット情報やワークショップにも注目

チケットは前売券を購入しておくとお得です。7月23日(木)まで一般1,800円、大学生1,000円、中・高校生500円で購入できます。
友人や家族とお出かけ予定なら、「親子チケット」や「トモダチ割」もお得に楽しむ方法です。さらに、「学生証付きチケット」「クイズラリー付きチケット」などスペシャルチケットも販売中。(※7月1日より販売しますので掲載タイミングにより記載ください)こちらもチェックしておきましょう。ワークショップやイベントなども開催されますので公式サイトでご確認ください。

この夏は「藝大生」になって美術の新しい“ミカタ”を手に入れよう

「藝大式 美術の”ミカタ” ―この夏、藝大生になる―」展では、小倉遊亀、黒田清輝、藤田嗣治そしてゴッホまで、本物の名作を教材に大学の講義を聴講するように体験できます。
12の講義を巡りながら、普段触れることのない藝大の学びを体験すれば、きっと新しい美術の”ミカタ”に出会えるでしょう。ご来場のみなさま一人ひとりが「藝大生」となって、美術の奥深さや楽しみ方を学んでみてはいかがでしょうか。

開催概要&アクセス

展覧会名: 藝大式 美術の”ミカタ” ―この夏、藝大生になる―
会期: 2026年7月24日(金)〜9月23日(水・祝)
会場: 東京藝術大学大学美術館 本館 展示室1、2、3、4
住所: 東京都台東区上野公園12-8
開館時間: 午前10時〜午後5時(最終入館は閉館の30分前まで)
休館日: 月曜日(8月10日(月)、9月21日(月・祝)を除く)
観覧料(税込): 【前売券】一般1,800円 / 大学生1,000円 / 中・高校生500円 【当日券】一般2,000円 / 大学生1,200円 / 中・高校生600円 ※障がい者手帳をお持ちの方と介助者1名は無料、親子チケット(一般+中高生)2,100円、トモダチ割あり

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鶴丸 明

アートの仕事に10年以上携わりながら、台東区の美術館・博物館・ギャラリーを日常的に巡っています。アートを「詳しい人のためのもの」にとどめず、初めての方でも気軽に楽しめる見どころや鑑賞のポイントを紹介。上野・御徒町・浅草エリアを中心に、展覧会レビューや美術館、カフェ、本屋などをつなぐ街歩き情報を発信します。
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