上野の森美術館で「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」開幕! 2026年夏、20年ぶりに名作が来日

ファン・ゴッホの傑作《夜のカフェテラス(フォルム広場)》に、上野で会える——。
「夜なのに、黒を使わない」——そんな革新的な表現で描かれた作品が、約20年ぶりの来日。

世界屈指のファン・ゴッホ・コレクションを誇るオランダ・クレラー=ミュラー美術館の所蔵作品のみで構成された展覧会、「大ゴッホ展」が、2026年夏、上野の森美術館で開催されます。

「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」 内容と見どころをご紹介

フィンセント・ファン・ゴッホとは?——10年間で燃え尽きた天才の生涯

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)が画家として生きたのは、わずか10年ほど。画廊勤務や伝道師の仕事を経て、27歳の頃にようやく「画家」という天職を見つけた遅咲きのスタートでした。
オランダ時代にはハーグ派やバルビゾン派の影響を受け、農民の暮らしを暗い色調で描きました。パリに出てからは印象派の鮮やかな色彩と出会い、作風を劇的に転換。そして1888年、南仏アルルに移住した彼は、15か月足らずで約200点の油彩を描き上げます。

アルル時代は、まさにファン・ゴッホ独自のスタイルが確立した時代。鮮やかな色彩の対比を活かした油彩表現が見るものの心を揺さぶります。

「大ゴッホ展」は2回にわけて開催されます。第1期となる今回は、そんなファン・ゴッホのオランダ時代からアルルで《夜のカフェテラス(フォルム広場)》が描かれるまでの前半生に焦点を当てた展覧会です。2027〜2028年にかけて開催予定の第2期では、約70年ぶりに《アルルの跳ね橋(ラングロワ橋)》が来日する予定です。

フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》1887年4-6月、油彩/厚紙、32.4×24cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink

「大ゴッホ展 夜のカフェテラス」の見どころ

見どころ① 不朽の名作《夜のカフェテラス》が20年ぶりの来日!

本展最大の目玉は、なんといっても《夜のカフェテラス(フォルム広場)》の来日です。1888年9月、ファン・ゴッホはアルルのフォルム広場で、夜中にこの作品を描き上げました。夜の青と、ガス灯が照らし出す黄色のテラスが織りなす色彩対比は、見る者の目に強い印象を与えます。濡れたように輝く星々も、コバルトブルーの夜空に映えて美しさが際立ちます。「黒を使わずに夜を描く」という革新的な試みは、その後の西洋絵画史にも影響を与えることとなりました。 妹へ送った手紙にはこんな言葉が残されています。

「そう、これは黒のない夜の絵だ。美しい青と紫と緑しかなく、これを背景に、明かりで照らされた広場は薄い硫黄色と緑がかったレモンイエローで色付けされている。夜を現場で描くのはとてつもなく楽しい」

引用:ファン・ゴッホ美術館(編)、圀府寺司(訳)『ファン・ゴッホの手紙』全2巻、新潮社、2020年

フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス(フォルム広場)》
1888年9月16日頃、油彩/カンヴァス、80.7×65.3cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink

見どころ② ルノワール、モネ……印象派の巨匠たちがそろい踏み

本展では、ファン・ゴッホ作品約60点に加えて、モネ、ルノワール、ピサロら印象派の巨匠たちの作品も並びます。ファン・ゴッホがパリに拠点を移した頃、パリには多くの芸術家たちが集まっていました。ファン・ゴッホが「モネの色彩感覚」や「ルノワールの鮮やかな陰影」に影響を受けた過程を、それぞれの作品を共に眺めることでより深く理解できるはず。一人の画家の進化を、同時代の文脈ごと体感できる展示構成は見逃せません。

ピエール=オーギュスト・ルノワール《カフェにて》1877年頃、油彩/カンヴァス、35.7×27.5cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
クロード・モネ《モネのアトリエ舟》1874年、油彩/カンヴァス、50.2×65.5cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
カミーユ・ピサロ《虹、ポントワーズ》1877年、油彩/カンヴァス、52.9×81.5cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink

本展の構成 5章構成で辿る、画家ゴッホの前半生

展覧会は5章で構成されます。

第1章では、ファン・ゴッホが画家として最初に強い影響を受けたハーグ派・バルビゾン派の作品から始まります。ミレーやイスラエルスといった画家たちの作品が並び、初期の作風の原点を知ることができます。

ジャン=フランソワ・ミレー《パンを焼く女》1854年、油彩/カンヴァス、55×46cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
ヨーゼフ・イスラエルス《ユダヤ人の写本筆記者》1902年、油彩/カンヴァス、107.7×151.4cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink

そして、第2章は「オランダ時代」と題して、キャリア初期の作品群へ。
農民の風俗画や労働者の姿を描いた作品などが紹介されます。キャリアを通じて共通するゴッホの眼差しが垣間見え、その後の展開への理解が深まります。

フィンセント・ファン・ゴッホ《大工の仕事場と洗濯場》1882年5月下旬、鉛筆、黒チョーク、黒インクのペンと筆、茶色の淡彩、不透明水彩、引っかき傷、升目状の跡/簀の目紙、28.6×46.8cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
フィンセント・ファン・ゴッホ《じゃがいもを食べる人々》1885年4月、リトグラフ/網目紙、28.4×34.1cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
フィンセント・ファン・ゴッホ《白い帽子をかぶった女の頭部》1884年11月-1885年5月、油彩/カンヴァス、44×36cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink

第3章では、パリ時代に影響を受けたルノワールやモネ、ピサロといった印象派画家たちの作品群が紹介されます。第4章では、パリ滞在の数年でゴッホ作品の色彩が変化していく様子を「パリ時代」として見つめます。《自画像》や《モンマルトルの丘》、印象派の影響が色濃い《レストランの室内》など、オランダ時代との対比が明確になります。

フィンセント・ファン・ゴッホ《モンマルトルの丘》1886年4-5月、油彩/カンヴァス、38.1× 61.1cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink
フィンセント・ファン・ゴッホ《レストランの室内》1887年夏、油彩/カンヴァス、45.5×56cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink

最終章は、アルルでの創作活動に迫る内容。ファン・ゴッホが南仏アルルに移住し、鮮やかな色彩と力強い筆致で独自のスタイルを確立した時期の作品が紹介されます。代表作《夜のカフェテラス(フォルム広場)》をはじめ、情熱的な色彩の風景画や静物画などが並び、画家の芸術が最高潮に達した瞬間を見ることができます。

フィンセント・ファン・ゴッホ《夕暮時の刈り込まれた柳》1888年3月、油彩/厚紙に貼ったカンヴァス、31.6×34.3cm クレラー゠ミュラー美術館
© Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands. Photography by Rik Klein Gotink

画家の歩みを時代順に辿れる構成は、ファン・ゴッホを初めて知る人にも、熱心なファンにも楽しめる本展ならではの魅力です。

大ゴッホ展をさらに楽しむためのポイント

お土産にぴったり。大ゴッホ展のオリジナルグッズをチェック!

会場併設ショップでは、オランダ生まれのミッフィーとのコラボぬいぐるみや、エンボス加工が美しい《夜のカフェテラス》缶、ファンも多いロルバーンのメモ帳など、本展ならではのグッズが揃います。公式図録は出品全74点を収録した読み応えのある一冊で、自宅に帰ってからもゴッホの世界に浸れます。

大ゴッホ展の第2期も要チェック!

大ゴッホ展は2期、足掛け4年にわたる壮大なプロジェクト。第2期も神戸を皮切りに、福島、東京へと巡回します。第2期(東京展:2027年10月〜2028年1月予定)では、オランダの国宝とも称される《アルルの跳ね橋(ラングロワ橋)》が約70年ぶりに来日予定。第1期を見たら、ぜひ第2期も見届けたいものです。

20年に一度のチャンス。ファン・ゴッホの傑作に会いに行こう

2026年、夏。ファン・ゴッホの名作《夜のカフェテラス(フォルム広場)》が、上野にやってきます。20年に一度のチャンスを逃さず、ファン・ゴッホが夜空に込めた情熱を肌で感じに、上野の森美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

開催概要&アクセス

展覧会名:大ゴッホ展 夜のカフェテラス
会期: 2026年5月29日(金)〜 2026年8月12日(水)
会場:上野の森美術館
住所:東京都台東区上野公園1-2
アクセス: JR上野駅公園口より徒歩3分/東京メトロ・京成電鉄 上野駅より徒歩5分
開館時間: [日~木] 9:00~17:30 [金・土・祝日] 9:00~19:00 (※入館は閉館の30分前まで)
休館日:会期中無休
入場料:[平日] 一般:2,800円/大学・専門学生・高校生:1,600円/中学生・小学生:1,000円/[土日祝日] 一般:3,000円/大学・専門学生・高校生:1,800円/中学生・小学生:1,200円/6/30まで高校生以下は無料
特別協力:クレラー=ミュラー美術館
後援:オランダ王国大使館

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鶴丸 明

アートの仕事に10年以上携わりながら、台東区の美術館・博物館・ギャラリーを日常的に巡っています。アートを「詳しい人のためのもの」にとどめず、初めての方でも気軽に楽しめる見どころや鑑賞のポイントを紹介。上野・御徒町・浅草エリアを中心に、展覧会レビューや美術館、カフェ、本屋などをつなぐ街歩き情報を発信します。

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