湘南辻堂の「麹と薬膳のおだし料理教室」。国際薬膳師が教える、だし・麹・薬膳で整う毎日のごはん

「麹と薬膳のおだし料理教室」は、湘南辻堂にある自宅を中心に開かれる、少人数制の料理教室です。テーブルコーディネートにもこだわり抜いており、「少し贅沢な時間」を感じさせる空気が漂います。

教室の軸になっているのは、出汁・麹・薬膳の3つ。出汁の美味しさを伝えることから始まり、麹で醤油に頼らない旨味を伝えてきた中で、「なぜこの食材を選ぶといいのか」をもっとわかりやすく伝えたい思いが生まれました。その後薬膳を学び、健康を意識しながら美味しく食べることを教えたいと考えるようになったそうです。

今では、麹と薬膳を意識したメニューを半年・一年かけてじっくり学ぶレッスンや、グルテンフリーの薬膳生米シフォンケーキのコースも展開する水垣範子(みずがき のりこ)さんに、料理教室を始めたきっかけから今後の展望まで、お話を伺いました。

出汁を見直すきっかけになった、息子の言葉

「料理教室を始められたきっかけを教えてください。」

2人目の子どもが小学校に入るタイミングでパートを探しても、年齢を理由になかなか採用されない現実に直面しました。子どもが学校に行っている間にできる仕事は人気なんですよね。年齢で、もう勝てないと感じ、悔しくて「何か自分でやろう」と考えました。
何ができるか考えていたときに、息子とのやり取りで自分の得意なことに気づかせてもらいました。
酷かった反抗期も少し落ち着いた頃、修学旅行先の息子へ「ご飯どう?美味しい?」と送ってみたら、「ママのご飯の方が美味しい」と返ってきたんです。その言葉で、「私の武器は料理かもしれない」と思いました。

器にもこだわっているという範子先生。夏らしい器が料理を引き立てていました。

「そこからどうしてお出汁の教室をすることになったのでしょうか。」

私は岡山出身で、その後18歳から京都の短大へ。関西の出汁文化で育ちましたが、早くに実家を離れてからは、長らく出汁を引く生活から遠のいていました。
出産後すぐに関東に引っ越し、子育てが始まると離乳食でお出汁を使おうと思っても、出汁をどうやって引けばいいのかわからないレベルで。忙しさもあって、味の濃さや塩分を気にすることもできない日々が続いていました。
そんな中、子育てが少し落ち着いてきた頃に、ふと、大切にしてこなかったお出汁を見直そうと思ったんです。息子が帰国子女の多い学校に通っていたこともあり、海外で「お出汁って何からできているの」と聞かれたときに、自分も子どもも説明できないことに気づいて。
それからは丁寧にお出汁を引き始め、美味しさを伝えたいと考えるようになりました。

出汁から麹へ、麹から薬膳へ。学びを深めた道のり

「お出汁から麹を使った教室にされたのはどうしてですか。」

お出汁で起業しようと決めたとき、SNSで見つけたのが「にんべん」のアンバサダー募集でした。まずはアンバサダーとして関わり、その後、にんべんの認定講師として活動をスタートしました。最初はレンタルキッチンを借りて、料理教室を始め、鰹節を削ったり、お出汁の飲み比べをしたりする鰹節教室も始めました。
生徒さんと話す中で、醤油に頼りきりの濃い味付けの方が多いことを知りました。私はお出汁はもちろん、麹の旨味も活かせば、減塩しても満足のいくご飯が作れるとわかっていたので、それを伝えたい思いが強くなっていったんです。

「そこからなぜ薬膳を教える教室になったのですか。」

「なぜこの食材を選ぶといいのか」を伝える方法を探すうちに、食材の効能を体系的に説明できる薬膳にたどり着きました。一年間学校に通って国際薬膳師の資格を取り、その後も学びを深めたいと研究科に進んだんです。とても興味深い内容だったのですが、専門用語が多く苦労しましたね。それを今はわかりやすい形で、みなさんにお伝えしています。

生徒さんにわかりやすく伝わるように、伝え方も試行錯誤しているそう。生徒さんを思う気持ちが伝わってきます。

薬膳を学んで「答え合わせ」ができるように

「薬膳を学んで、どんな変化がありましたか。」

私自身、貧血がひどくて薬を飲むほどでした。血が足りていないと、気持ちが不安定になったりイライラしやすくなったりするんですよ。心が滅入る原因は一つではありません。ただ、血が足りていることの大切さを知ることで、自分や家族に不調が出たときに、「これを食べさせようかな」と対応できるようになりました。

身体の熱を冷ましてくれるというベトナムの蓮茶をいただきました。お茶も時期に合うものを選んでいるそうです。

「薬膳の理論を座学だけでなく、あえて料理を通じて伝えているのはなぜですか。」

私の強みは、美味しいご飯を作ってお伝えすることだと思っています。理論を突き詰めて学びたいなら、学校に習いに行った方がいい。それくらい奥が深い世界なので。
ただ、日常で実際に使える部分はごくわずかです。それをどう家庭で使える形に落とし込み、伝えるかが私の仕事です。

選べるコース。レッスンの形態とは。

「現在はどんなレッスンがあるのでしょうか。」

大きく分けると、麹と薬膳を軸にした料理教室と、薬膳生米シフォンケーキのコースがあります。それに加えて、不定期のレッスンも開いていて、詳しい日程やメニューはInstagramでお知らせしています。
麹と薬膳のおだし料理教室は、継続講座を主軸としています。月に2回のペースで、1回目はZoomでの座学。季節の過ごし方や、今の時期に取り入れたい食材について、1時間半ほどかけて資料をもとに学びます。
2回目は対面での実習です。座学で扱った食材を使ったレシピを実際に作り、コツや作り方の基準をお伝えしていきます。

半年と一年から選べて、一年通して学ぶと季節ごとの食養生をひととおり経験できるコースです。生徒さんから、家で資料を見返して何度も実践していると聞くと、「使い続けてもらえるレシピを考案できている」と自信になります。
講座生向けには「仕込み会」もあって、塩麹やにんにく麹、甘酒などを季節ごとにオンラインで一緒に仕込みます。アーカイブも残るので、当日参加できなくても自分のタイミングで作れるのも好評です。

「メニューはどうやって決めているのですか。」

実は、直前まで決まりません。そのとき自分の体が欲していない食材は美味しく感じないんですよね。7月に試作したさつまいものシフォンを子どもに出しても、積極的に食べてくれなくて。暑い時期なので、体が欲していなかったのでしょうね。前日まで何度も試作して、最終的に決めるようにしています。

全体のバランスを重視しているという範子先生。健康的でありながらしっかり満足感もある、考え抜かれたメニューです。

小麦を減らした先で出会った、薬膳生米シフォンケーキ

「薬膳生米シフォンケーキのコースはどのようなものですか。」

家庭用は月1回1種類ずつのペースで、春・夏・秋・冬の季節ごとに3種類、1年かけて12種類をひととおり習得できるコースです。3ヶ月から1年まで、期間は選んでいただけます。
ライセンスの取得を考えている方、人に教えることまで見据えている方には、どんな未来を描いているかを伺いながら、個別に相談し、さらに別のコースを組んでいます。

「薬膳生米シフォンケーキを作るきっかけはなんだったのでしょうか。」

小麦を摂るのを減らしたいと思ったのがきっかけです。小麦を減らしたら、体の重だるさが減りました。これを生徒さんにも体験して欲しいと思い、米粉パンをレッスンに入れたことがあったんです。でも、自宅とレッスン会場ではオーブンの環境が違って再現が難しく、一度は諦めました。
その後、生米から作ることができるシフォンケーキに出会ったんです。ベーキングパウダーを使わずに家庭の生米でふわふわのシフォンが焼けることに衝撃を受けました。
さつまいもや黒ごま、きなこ、小豆、人参など、季節の食材を混ぜ込める点も薬膳の考え方と通じるものがあって、素晴らしいレシピだと感じました。このレシピを多くの人に伝えたいと思い、薬膳生米シフォンケーキのコースを作ったんです。

少人数の自宅レッスンと、大人数の単発レッスン

「なぜ自宅とレンタルキッチンでの教室を行っているのでしょうか。」

全日程が自宅で開催できればベストです。ですが、自宅は家族の憩いの場でもあるので、曜日によっては外部のレンタルキッチンを借りています。
包丁一つとっても、切れ味が全然違うんです。同じ食材を使っても、切り方や鍋の選び方で仕上がりが変わります。自宅だと実際に体験していただけるので、好評です。テーブルコーディネートにもこだわっているので、それも大きな理由です。
ただ、レンタルキッチンでは広いキッチンで、同時に調理することができるという利点があります。それぞれの良さを活かしながらレッスンを考えています。

家に帰って自分で作れるよう、基本的には生徒さんが主体で作ります。範子先生はそっと見守り、ポイントを伝えていました。
テーブルコーディネートが美しい食卓。これだけでも気分が上がります。同じ器を購入する生徒さんも多いのだとか。

「レンタルキッチンでのレッスンはどんな内容ですか。」

お稲荷さんレッスンやお味噌作り、サムゲタンやキンパなどのメニューを開催してきました。単発で10〜12人ほどの大人数でできるので、新しい方にも気軽に参加してもらえるのもいいところですね。

集客に苦しんだ日々を経て、見えてきた「届けたい人」

「これまで大変だったことはありますか。」

最初はなかなか集客ができなかったことです。友人の力を借りてどうにか人を集めていました。需要がないのかなと思う時期もあって、当初は休み休み続けていましたね。
でも、薬膳をしっかり学ぶことで、「健康になりたい」と思っている方、「薬膳を学びたい」と来てくださる方にしっかりと答えを伝えられるようになりました。そして、実践で使えるところまで教えることができています。今は、少しずつ必要な方に届いている手ごたえを感じています。

「どんな生徒さんが多いですか。」

子育てが落ち着いた50代・60代の方が中心です。「身体を整えたい」と感じる年代の方が多いですね。生徒さん同士も本当に仲が良くて、いい方ばかりなんですよ。
忙しくて、食事が偏りがちな方にこそ伝えたいと思っているので、できるだけ手に入りやすく、簡単にできるレシピを考案しています。

範子先生を「のりちゃん」と呼び、和気あいあいと話す生徒さんたちの姿が印象的でした。

これから描きたい未来

「今後の展望を教えてください。」

日常的に使える方法を伝え、薬膳を身近に感じてもらいたいです。「食に正解はない」ので、完璧を目指さなくていいと思っています。まずは広く知ってもらい、日々の生活から少しずつ健康な食生活を取り入れてもらえればうれしいですね。
企業やレストランとのコラボレーション、メディアへの出演など、教室の外にも活動を広げていきたいとも思っています。いずれは日本の食文化を海外の方に伝える機会をつくりたい、という夢もあります。
薬膳生米シフォンケーキの講師コースを通じて、自分の学びを次の世代に受け渡していくことも見据えています。

さいごに

取材を通して印象に残ったのは、範子さんの「薬膳の知識を伝えるだけではなく、いかに日常のご飯の中に美味しく取り入れるかを伝えるのが自分の使命」という言葉です。そのために前日まで「試作」を繰り返し、家族に食べてもらいながら味を仕上げていく。丁寧な積み重ねが、生徒さんからの厚い信頼につながっているのだと感じました。

自分や家族の健康のために毎日の食事と向き合いたくなったら、ぜひ「麹と薬膳のおだし料理教室」のレッスンに足を運んでみてはいかがでしょうか。

麹と薬膳のおだし料理教室
講師:水垣範子さん(国際薬膳師・にんべん認定講師)
拠点:湘南辻堂/全国対応のオンラインレッスンあり
詳細はThreads・Instagramにて確認

\この記事をシェアする/

森田かえ

取材ライター

教育・子育て・暮らしを中心に執筆する取材ライター。 人の想いや背景を丁寧に聞き取り、言葉にすることが得意です。 子どもや家族、地域にまつわるテーマを軸に、読み手の暮らしに届く文章を心がけています。 お酒を飲みながら一人の時間を楽しむのが、ささやかな幸せ。
関連記事

関連記事