福岡・御所ヶ谷|カカオの奥深さと職人の愛情 に満たされる。月に数日だけ開く「CACAORI」 のビーントゥバーチョコレート
福岡市中央区御所ヶ谷。静かで落ち着いた住宅街の路地を一歩奥へと進むと、そこにはふっと時の流れが変わったかのような、どこか懐かしい昭和のアパートが佇んでいます。まるで物語のワンシーンのように現れるその不思議な建物の1階にあるのが、ビーントゥバーチョコレートファク トリー「CACAORI(カカオリ)」です。
店名の「CACAORI」は、カカオ(Cacao)と、店主である香織さんの“香りのori”を掛け合わせた素敵な造語です。月に2〜4日ほどしか開かない特別なこの場所には、カカオ本来の芳醇な魅力と、香織さんの温かな情熱がギュッと詰まっています。
個性的なカカオの風味たっぷりのビーントゥバーチョコレート に出会う
「ビーントゥバー(Bean to Bar)」とは、カカオ豆(Bean)の仕入れから、焙煎、粉砕、生地の製造、そして板チョコレート(Bar)の成型・販売まで、すべての工程をひとつの工房が一貫して手掛けるクラフトスタイルのこと。

元来、大のチョコレート好きで、特に市販の板チョコレートに親しんでいたという香織さん。そんな彼女がチョコレート職人への道を歩み出すきっかけとなったのは、ご主人がベトナム出張のお土産に買ってきてくれた、産地の異なるチョコレートでした。「産地が違うだけで、こんなにも味わいや風味が変わるなんて…」と、その奥深さに大きな衝撃と強い感動を受けたといいます。
そこから学びの探究が始まりましたが、情熱を高める中で直面したのがコロナ禍でした。楽しみにしていたチョコレート講座が相次いで中止になるなどの試練に見舞われながらも、香織さんは諦めることなく、日本各地へ勉強に赴き、カカオの世界へ深く引き込まれていきました。豆の選別から焙煎、練り上げに至るまで、工程ごとにさまざまな選択肢や製法があるチョコレート作りは、一筋縄ではいかない難しさがあるからこそ、尽きない面白さがあったのです。


「無駄なものを加えないカカオ豆と砂糖のみで作ったシンプルなチョコレートの美味しさを、まだ知らない方にも知っていただきたい。そのきっかけとなるのが、うちのビーントゥバーチョコレートだったらなおうれしいですね」。
そう語る香織さんが作るチョコレートは、力強いカカオの個性をしっかりと生かしつつも、まるで優しさと愛情で包み込まれているかのような滋味深い味わい。一口頬張れば、食べる人の心をそっと解きほぐし、穏やかな幸せで満たしてくれます。
古いアパートを素敵にリノベーションしたファクトリー&カフェ
筆者が初めて「CACAORI」を訪れた際、扉を開けた瞬間に甘く芳醇なカカオの香りが部屋中に満ちていました。一瞬で幸せな感覚に包まれたことは言うまでもありません。
2021年にオープンしたこのファクトリーは、昭和の面影を残す古いアパートの一室をリノベーションした空間です。実は、コロナ禍で意図せずできた時間を生かし、ご主人とともにご夫婦の手作業で内装を仕上げたのだそう。手作りの温もりと洗練されたセンスが見事に調和した店内は、こぢんまりとしながらも非常に居心地が良く、ゆっくりと羽を休めたくなる魅力に溢れています。
「元々カフェなど営む予定は全くありませんでしたが、たまたま主人がお土産に買ってきてくれたチョコレートからあれよあれよと背中を押されるように、ファクトリーやカフェを作ってしまい、自分でも正直驚いています(笑)。だけど、自分が愛情を込めて作ったチョコレートをお客さまが食べていただいた時の満面の笑みをみたら、やっぱりやってよかったなとしみじみ思います」と香織さん。


現在は月の大部分をチョコレートの製造作業に充てていますが、一から丁寧に手作業で行うため、生産が追いつかないほどの人気ぶりです。
店舗や公式WEBショップでの販売だけでなく、地域のマルシェやイベントにも積極的に出店しており、イベントで「CACAORI」の味に出会った方が、後日わざわざ実店舗まで足を運んでくれることも多いのだとか。月に数日という限られた営業日でありながら、毎月欠かさず訪れる熱心なファンや、不定期で開催される「チョコ会」に集うチョコレート好きの輪が広がるなど、人々を引き寄せる温かなコミュニティの場にもなっています。
常時ある3種類のチョコレートと自家製チョコを使ったスイーツ も人気
「CACAORI」の看板商品は、職人の技と愛情が凝縮された手作りの板チョコレート(各1,400円) です。定番として親しまれているのは、バランスの取れた「ガーナ70%」、フルーティーで豊かな風味が広がる「ベリーズ70%」、そして食感も楽しい「ざくざくガーナ70%」の3種類。これらに加えて、取材時にはスパイシーでスモーキーな「パプアニューギニア70%」が登場するなど、その時々の期間限定の品が店頭を彩ります。
店内には嬉しいことに「食べ比べセット(4種/350円)」が用意されており、それぞれの産地が持つ風味の違いをじっくりと試食してから、お気に入りの一枚を選ぶことができます。

さらに、シナモンとピンクペッパーがアクセントになったナッツ入りの「おつまみチョコレート(1,500円)」、香ばしくキャラメリゼしたアーモンドをコーティングした「アマンドショコラ(1,000円)」、食感がクセになる「ニブチョコレート(900円)」や「ローストカカオニブ(900円)」など、バラエティ豊かな商品がずらりと並びます。これらは店頭はもちろん、遠方からでも公式ウェブショップを通じて購入が可能です。

カフェスペースで味わえる、カカオの魅力を最大限に引き出したオリジナルドリンクや自家製スイーツも見逃せません。香りを愉しむ珈琲をはじめ、濃厚な「ホットチョコレート」、爽やかな「クラフトカカオコーラ」、甘酸っぱさが癖になる「カカオパルプとレモンソーダ」といったこだわりのドリンクラインナップ。


スイーツには、濃厚な味わいが人気の「チョコレートタルト」や「ブラウニー」、カカオの果肉を使用したさっぱりとした味わいの「カカオパルプチーズケーキ」などが揃い、ファクトリーならではの贅沢なカカオ体験を心ゆくまで堪能できます。
まとめ
日常の喧騒から少し離れた閑静な住宅街で、カカオ豆と真摯に向き合いながら、一つひとつ丁寧に紡ぎ出される「CACAORI」のビーントゥバーチョコレート。 自分へのとっておきのご褒美にはもちろんのこと、大切な人へ感謝の気持ちを伝えるギフトに選んでも、きっと特別な喜ばしい時間を届けてくれるはずです。
営業日は月に数日と限られており、開店日時や営業時間は月ごとに異なります。店頭では試食をして商品を選べ、ギフト用に詰め合わせ等もしてくれるそう。訪れる際は、あらかじめ公式Instagramにて最新のスケジュールをご確認いただくのがおすすめです。 扉を開けた瞬間に広がる甘く甘美な香りと、笑顔あふれる素敵なカカオ体験を求めて、ぜひ足を運んでみてください。
ビーントゥバーチョコレートファクトリー CACAORI(カカオリ)
住所: 福岡県福岡市中央区御所ヶ谷3-29 和幸荘7号室
営業時間・営業日: 月に数日のみ営業(営業日・時間は月によって異なります) ※詳しいオープン日や最新情報は公式Instagramにてご確認ください。

名原 和見
ライター

