東戸塚で愛されて4年。街のパン屋「Tan Tan Bakery」が届ける揚げたてあげパンとふんわりパンの優しい味わい
横浜市戸塚区川上町のマンションの1階に佇む「Tan Tan Bakery」。国産小麦100%・生イースト使用・無添加にこだわりながら、小さな子どもからご年配の方まで、幅広い世代に愛される優しい味わいのパンを届け続けています。
2022年のオープンから、今年で4年目。マンションの夏祭りなどのイベントや口コミを通じて地域の人との輪が広がり、地域に根ざしたパン屋さんとして親しまれてきました。
今回は、子育てをしながらお店を切り盛りするオーナーの長尾さんに、開業のきっかけからパン作りへのこだわり、これからの展望まで、じっくりお話を伺いました。

京都で育った「街のパン屋さん」への記憶が原点
「パン屋さんを始められたきっかけを教えてください。 」
結婚前は飲食関係の仕事をしていて、食に関わるいろいろな職場で働いてきました。出身が京都なんですが、地元には個人経営の小さなパン屋さんがたくさんあったんです。小さい頃からチェーン店ではない、地元のパン屋さんのパンを食べて育ちました。でも、結婚して主人の仕事の都合で東戸塚に越してきたら、近くにパン屋さんがほとんどなかったんですよね。そのときに「パン屋さんをやったらいいかも」と思い始めました。
「そこからどのように開業へとつながっていったのですか。 」
ちょうど子育てが少し落ち着いてきたタイミングだったので、老後も含めて先のことを考えるようになりました。人生100年時代と言われていますし、定年がある仕事ではなく、自分のペースで続けられる仕事を考えないといけないと思うようになったんです。
そこで、好きなものを考えたときに、やっぱり食べものだったんですよね。チャレンジしてみたいと思っていたときに、パン屋さんの開業をテーマにしたテレビ番組を見て、主人と2人で研修に行きました。そこで、パン屋さんを開業する流れを教えてもらえたんです。それがすごく良くて、「これならチャレンジできるかも」という気持ちになり動き出しました。
自分らしさを大切にできる、開業というチャレンジ
「開業をするにあたり重要視したことはありましたか。 」
自分もパンが好きなので、いろいろなパンを作れる自由度を重要視しました。物件のことなどもシミュレーションしながら考えていたら、タイミングよく家の近くに物件が見つかったので、思い切ってやってみようと決めました。最近は、自分の好みだけでなく、地域のニーズに合わせた商品を考えることも大切にしています。

「不安はありませんでしたか。」
もちろんゼロではなかったです。ただ、年齢を重ねてから始めると立ち仕事はきつくなるので、チャレンジするなら早めのほうがいいと思いました。子どもも少し大きくなっていたし、家からも近かったので「この場所なら両立できそう」という後押しもありました。
「国産小麦100%・生イースト使用・無添加というこだわりも印象的でした。」
これは、開業支援の会社さんがオリジナルで打ち出しているこだわりなんですが、結果的にお店としてはありがたい付加価値になりました。
幅広い客層に寄り添う、優しい味
「パンにはどんなこだわりがありますか。」
毎日食べてもらえる、ふんわりとした優しい味の安全安心なパンを、小さなお子様からご年配の方まで幅広い層に食べていただきたいと思っています。今はハード系やおしゃれな見た目のパンを出しているお店も多いですが、この辺りは昔からあるマンションもあれば、新しい大きなマンションや一戸建ても多く、客層がとても幅広いんですよね。


「たしかに、ハード系が多いパン屋さんだとお年寄りや子どもには向かないですよね。」
そうなんです。家族みんなが好きなパンを選べるラインナップにしています。また、お客様の声も積極的に取り入れて、新商品にも活かしています。当初食パンは出していませんでしたが、ご要望があったので出すようになりました。
揚げパンをはじめとする、40種類のラインナップ
「現在はどのくらいの種類のパンを出されているんですか。」
だいたい40種類くらいです。新商品も思いついたときや、季節の変わり目の少し前のタイミングで考案しています。春ならいちご、夏ならレモンやサルサソースを使ったものなど、季節ごとの商品も好評ですね。前の年に人気だったものは、お客様に喜んでもらえるので、翌年も出すようにしています。
「揚げパンをその場で揚げてもらえるのが印象的でした。」
始めは揚げパンはやっていなかったんですが、揚げたてで出しているというお店があるのを知って、うちのお店でも出したいと思いました。ホットドッグ用のパン生地を使えそうだなと思ったのがきっかけです。シュガーやきな粉、シナモンもちょうど揃っていたので試してみたら、思った以上に売れるようになりました。冷凍せず朝焼いたものをその場で揚げているので、油っぽさが少なくてふわふわなんです。お子さんに特に人気で、幼稚園や学校が早く終わる水曜日はよく出ますね。

「長尾さんオススメのパンはありますか。」
メロンパンがオススメです。人気も高いですね。下の生地に対して上のサクサクの生地が多いのが特徴です。バリエーションも多いので気分に合わせて選んでもらえます。個人的に大好きなメニューです。

「一番たくさんの種類のパンが店頭に出るのは何時頃でしょうか。」
11時ごろが一番多いですね。お昼ご飯に買われる方が多いので、それに合わせて焼いています。日によっては完売してしまうこともありますが、閉店間際まで品ぞろえを確保できるように考えながら焼いています。

お客様のことを考えた店づくりとサービス
「店内は木の温かみを感じるつくりですね。」
もともと木の雰囲気が好きだったので、温かい家庭的な感じが出せたらいいなと思いました。パンを選ぶスタイルも、スタッフに選んでもらう対面式ではなく、トレーを持って自分のペースで選んで取り、最後にレジへ持っていくセルフスタイルにしています。ガラス越しやスタッフに選んでもらう形だと、選ぶときに焦ってしまったり、後ろに並ばれると気になったりしてしまいますよね。選ぶ楽しみは、私自身が好きな時間でもあるのでこだわりました。棚の高さも、お子さんが自分で見て、取れるくらいに合わせたんです。

「お取り置きも珍しいサービスだと思いました。」
最初はなかなか対応できずお断りしてしまうこともありました。でも、来てくださったのに「欲しいものがない」というお声をいただくこともあったので、少しずつ対応してご要望にお応えしていった感じです。今は1個からでもお取り置きやご予約を受け付けています。
開業当初の苦労を経て、地域とともに歩んだ4年間
「どんな形で地域とのつながりが広がっていったのでしょうか。」
少しずつ常連のお客様ができてきて、口コミで新しい人も来てくれるようにもなりました。あとは年に数回、近隣のマンションの夏祭りイベントにお声がけいただいて出店しています。毎年声をかけてもらえるので、そこからまた輪が広がっている実感があります。天候が悪い日でも「ちょっとお昼ご飯を買いにきた」と近くのご年配の方が来てくださることも多いのでうれしいですね。
「大変だったことはありましたか。」
オープン直後は、チラシなどを見て本当にたくさんの方が来てくださったのですが、その後、最初の勢いが落ち着いて、同じ商品を出しても「先月は売れたのに今月は売れない」ということも多く、どうしたら買っていただけるのか感覚がつかめない時期がありました。朝と土曜日は主人が手伝ってくれますが、それ以外は一人で焼いているので、たくさんの種類を提供したいと思いながらも、上手くいきませんでした。でも、少しずつ慣れてきて商品のバリエーションを増やせるようになっていった感じです。

「美味しかったよ」の一言が支える、忙しい毎日
「子育てをしながらの経営は大変なことも多いと思います。」
始めた当初は子どもたちが小学生と中学生で、フルタイムで働くのが初めてだったこともあり、寂しい思いをさせてしまうこともありました。一緒にいられる時間は減りましたが、休みの日にご飯を一緒に食べるなど、限られた時間の中で、家族の時間が濃くなったように感じます。
営業時間も平日は16時(土曜日は18時)までにしているのは、家庭との両立のため。休みの日も仕込みや買い出しがあるので、丸ごとオフになる日はほとんどなく、ずっと頭の中でパンのことを考えています。今、人生で一番忙しいですね。
「身体が休まる暇がありませんね。」
それでも、「美味しかったよ」というお声をいただくと、大変さが吹き飛びます。オープンから4年間通ってくださる方や、週2回来てくださる方もいて、そういう方がいるから頑張れるので、本当にありがたいですね。
「接客で大切にされていることはありますか。」
午前中は裏で作ることが多く接客はできないのですが、午後からはお客様と顔を合わせられるので、何回か来ていただいているお客様には積極的にお話しています。もともと接客が好きなので、楽しいですね。

「最後に、お店に来てくださる方へメッセージをお願いします。」
東戸塚の街のパン屋さんという、本当に素朴な感じを大切にしています。少し奥まった場所にあるので、ドキドキしながら来られる方もいらっしゃるようですが、構えずに気軽に来ていただけたら嬉しいです。
揚げたて・焼きたてを味わう、実食レポート

揚げパンは、その日中に食べて欲しいとのこと。筆者は取材後に早速子どもたちと一緒に食べました。揚げたてなので、外はサクっとしていて中はふわふわ。フレーバーの粉もたっぷりかかっているので、味がしっかりしています。油を吸い過ぎていないので、重くなくペロリと食べられました。

従業員さんオススメのハーブが生地に練り込んである塩パンは、見た目はふわっとしていますが、食べてみるともちっと感もあり、食べ応えがありました。塩味もしっかりきいています。ハーブの味がアクセントになっていて、鼻に抜けるハーブの香りがクセになる一品でした。

夏限定の瀬戸内レモンパンは、クリームにしっかりレモンの酸っぱさがあり、甘すぎず爽やかな味わい。生地は柔らかく、周りのクッキー生地との食感の変化も楽しめ、食べ応えも感じられます。夏にぴったりのさっぱり食べられるパンで、筆者のお気に入りです。
東戸塚の暮らしに寄り添う、優しいパン屋さん
京都で育った経験から「地元のパン屋さん」への憧れを胸に、子育てと向き合いながら一つひとつ形にしてきた「Tan Tan Bakery」。取材の中で語られる言葉の端々から、お客様への気配りと、家族との時間を大切にする長尾さんの温かなお人柄が伝わってきました。
開業当初の混乱も、家庭との両立の大変さも、正直な言葉で話してくださった長尾さん。それでも「美味しかった」の一言に支えられていると話す姿が印象的でした。
思わず笑顔になり、家族の会話が増える、優しい味のパンに出会いたくなったら、ぜひ東戸塚の「Tan Tan Bakery」に足を運んでみてはいかがでしょうか。
Tan Tan Bakery
住所:神奈川県横浜市戸塚区川上町412-1 シーアイマンション1F,
営業日:火・水・金・土
営業時間:平日 10:00〜16:00/土曜 10:00〜18:00
その他サービス:お取り置き可(1個から対応可)、ご予約可

森田かえ
取材ライター

