福岡・宇美町|職人の手仕事と“焼く”技術が光る名店。「想夫恋 宇美店」で味わう至高のパリッもち焼きそばと地域への情熱
福岡県糟屋郡宇美町。かつて炭鉱の街として活気に満ちあふれていたこの地に、長年地元客や遠方からのファンに愛されている焼きそばの名店があります。「想夫恋宇美店」です。
想夫恋といえば、昭和32年(1957年)に大分県日田市で創業し、九州を中心にフランチャイズ展開を広げる日田焼きそばの元祖。その中で、今回ご紹介する宇美店は昭和62年(1987年)9月に創業し、現在は2代目の後藤堅太郎さんが暖簾と伝統の味を確かに守り続けています。
一見すると誰もが知る焼きそばですが、想夫恋の焼きそばは私たちが普段目にする“炒める”焼きそばとは一線を画します。今回は職人の技とこだわり、そして店主の地域への温かい想いが詰まった「想夫恋 宇美店」の魅力に迫ります。
炒めずに“焼く”伝統の手法。熟練の暗黙知が生み出す食感のバリエーション
想夫恋の焼きそば最大の特徴は、ひとくち食べた瞬間に押し寄せる食感の豊かさにあります。カリッと香ばしく弾ける麺もあれば、噛むほどにもちもちとした弾力を感じる麺もあり、ひと皿の中で驚くほど多彩な食感のグラデーションを楽しめるのです。
その秘密こそが、創業以来引き継がれている“想夫恋焼き”と呼ばれる独特の手法。麺を野菜と一緒にジャッジャッと炒めるのではなく、鉄板の上でじっくりと“焼く”という工程を大切にしています。
この焼く作業が実に奥深く、麺の茹で加減やその日の気温・湿度によっても焼き時間が微妙に左右されます。焼きすぎても硬くなり、焼きが甘くても独特の香ばしさは生まれません。この絶妙な塩梅を体得するには熟練の技術が必要で、2代目の後藤さんも日田の本店で半年から1年におよぶ厳しい研修を重ねたといいます。

現在では職人ならではの経験と勘。いわゆる“暗黙知”を自在に操り、見事な手さばきを見せる後藤さん。「よくご来店いただいている常連さんはだんだん好みもわかってきますので、焼きの具合を微妙に変えてお出ししていますよ」と、余裕の笑みをこぼす姿にプロフェッショナルとしての自信が覗きます。
今回は、そんな店主おすすめの黄金コンビで注文してみました。看板メニューの「焼きそば並盛(1,050円)」に「生たまご(60円)」をトッピング。さらに「マヨネーズ(100円)」と、サイドメニューで人気の「揚げ餃子(8個 440円)」を添えて、いざ実食です。


ダイナミックな職人技に開眼! 宇美店限定の「焼きそば専用ふりかけ」で二度美味しい味変体験
厨房で繰り広げられる「想夫恋焼き」の工程を特別に見学させていただくと、その手仕事は素人が手早く炒める焼きそばのイメージとはまったく異なるものでした。
まず、熱々の鉄板の上にラードをなじませ、とろりと溶けたのを見計らって厚切りの豚肉をおきます。その傍らで麺を理想的な硬さで茹であげ、茹でたての麺を豚肉の上に大胆に載せてじっと待ちます。さらに麺をひっくり返し、再びじっと待つ…。一見静かなこの“待つ時間”こそが、麺の表面をカリッと香ばしく焼き固めるために欠かせない大切な時間なのです。

特殊なヘラで麺の焼き色を数回確認したのち、その上へドバッと大量のシャキシャキもやし、青ネギ、胡椒、特製ソースが投入されます。すると待ってましたとばかりに、後藤さんの両手に握られた2本のヘラがリズミカルに舞い始めました。


カメラを構えながら思わず「えっ、そこまで持ち上げるの!?」と声をあげそうになるほど、その動きは華麗でダイナミック。麺と具材が大きく宙を舞い、ふわりと持ち上がるたびに、香ばしいソースの芳しい香りが立ち上り、鼻腔をくすぐります。


できあがった焼きそばをお皿に盛り付け、中央に艶やかな生たまごを落とせば完成です。カリッ、もちっとした麺の食感は言わずもがな、熟成ソースの深い旨みがダイレクトに口いっぱいに広がります。途中、生たまごを崩して麺に絡めれば、まろやかでクリーミーな味わいへと劇的に変化し、箸が止まらなくなります。

「マヨネーズはお好きですか? 味変に当店オリジナルの“焼きそば専用ふりかけ”をそのままかけてもいいですし、マヨネーズに混ぜて絡めて食べるのもおすすめですよ」と後藤さん。
アドバイスに従って試してみると、柚子の爽快な香りやキレのある花椒、パンチのある韓国唐辛子とマヨネーズのコクがマッチし、これが驚くほど相性抜群。ボリューム満点の一皿でありながら、最後までまったく飽きることなくペロリと平らげてしまいました。

この「焼きそば専用ふりかけ(800円)」は、なんと宇美店だけにしか存在しない完全オリジナル商品。試作を何度も重ね、試行錯誤しながらやっと完成させた渾身の作で、店頭はもちろん、遠方のファンのために宇美店の公式オンラインショップでも販売されています。気になる方はぜひチェックしてみてください。
自宅で味わう職人の味。昭和から令和へ、宇美町の活気を呼び戻す2代目の挑戦
想夫恋全店では、以前から自宅でも本格的な味を楽しめるテイクアウト用のチルド冷凍品(600円)を展開していましたが、最近新たに登場した「想夫恋焼き 匠(900円)」が大きな話題を呼んでいます。


これは、お店で職人が一枚一枚丁寧に手焼きした焼きそばを、できたての旨みそのままに急速冷凍して専用容器に封じ込めたプレミアムな逸品。電子レンジで手軽に温めるだけで、お店と変わらないカリッともちもちの食感が蘇ります。近くに店舗がない方へのギフトとしても、自分へのご褒美テイクアウトとしても、ファンには願ってもない魅力的なアイテムといえるでしょう。
昭和、平成、令和と時代を駆け抜け、来年で創業40周年の大きな節目を迎える想夫恋 宇美店。店主の後藤さんは、日頃の感謝を込めてお客様還元イベントの構想を温めているほか、地元・宇美町への貢献活動にも熱い情熱を注いでいます。
最近では地元の商工会において、AIを活用した集客サポートやデジタル化の取り組みなど、地域活性化のリーダーシップを発揮。「宇美町全体を盛り上げて、みんなで活気と魅力にあふれた街にしていきたいですね」と語る後藤さんの眼差しは、未来を見据えています。かつて炭鉱の街として栄えた地域の賑わいを取り戻そうと、伝統の味を守る傍ら、街づくりの原動力としても積極果敢な挑戦を続けています。
まとめ

職人の一気呵成な手仕事が生み出す「焼く」焼きそばの真髄。想夫恋 宇美店は、単にお腹を満たす食卓というだけでなく、長年培われてきた職人技の力強さと、店主の温かな地域愛に触れられる場所でした。
伝統の製法を守り抜きながらも、独自の「焼きそば専用ふりかけ」の開発や最新の冷凍技術「匠」の導入、そして街の未来を見据えた地域活動まで、その歩みは常に前を向いています。
名物のパリッもち焼きそばを味わいに、そして活気ある街の熱気を感じに、ぜひとも宇美町の「想夫恋 宇美店」へ足をお運びくださいませ。
想夫恋 宇美店
住所: 福岡県糟屋郡宇美町宇美中央2-24-7
電話番号: 092-933-3991
営業時間: 11:00〜15:00、17:30〜19:30
定休日: 木曜不定休

名原 和見
ライター

