廃校から生まれた共創の場「なごのキャンパス」が名古屋で果たす役割とは?集う人と地域とのつながりを取材
旧那古野小学校を活用し、2019年に誕生した「なごのキャンパス」。名古屋駅から徒歩圏内という立地にありながら、校舎の面影や地域の記憶を残すこの場所には、スタートアップ、大企業、個人事業主、学生、そして地域住民まで、実にさまざまな人が集まっています。
コワーキングスペースやオフィスとしての機能だけでなく、体育館やグラウンド、カフェまで備えるなごのキャンパスは、一般的な起業支援施設とは少し違う存在です。
そこにあるのは、事業を育てるための場所であると同時に、人と人、人と地域が自然に交わるための仕掛けでした。
今回は、なごのキャンパスの立ち上げ背景から、現在集まる企業や利用者の特徴、地域との関わり、そして今後の展望まで、運営メンバーである株式会社LEOの古川様へお話を伺いました。
旧那古野小学校から生まれた「なごのキャンパス」

ー始めに「なごのキャンパス」の立ち上げの理由やきっかけを教えてください。
なごのキャンパスのはじまりは、旧那古野小学校の閉校後に名古屋市が行った施設活用の民間公募にあります。
2015年に閉校した旧那古野小学校は、その後、民間による活用提案が募られました。当時はデベロッパーや教育関連など、さまざまな立場から提案が集まっていたそうです。そうしたなかで、当時の東和不動産、現在のトヨタ不動産の関係者や運営メンバーが中心となり、「スタートアップや新しいビジネスが生まれる場所をつくる」という構想を提案し、事業者として選ばれました。
ちょうどその頃、名古屋市や愛知県でもスタートアップ支援に力を入れ始めていた時期でした。地域全体で新たな産業や挑戦を後押ししようという流れが生まれるなか、なごのキャンパスもその一翼を担う場所として立ち上がりました。
―新しく施設をつくるのではなく、廃校活用という形を選ばれた理由は何だったのでしょうか?
小学校は、もともと地域にとってのハブのような存在です。多くの人にとって思い出や愛着のある場所であり、地域の暮らしのなかに自然と根付いてきた空間でもあります。なごのキャンパスでは、そうした背景を引き継ぎながら、新しい産業や挑戦が生まれる拠点としてこの場所を再生してきました。
運営側としても、真新しいオフィスビルにはない、少しノスタルジックでカジュアルな雰囲気が、この施設の魅力になっていると感じています。歴史を感じる校舎だからこそ、構えすぎずに立ち寄ることができ、自然な交流も生まれやすいのかもしれません。

ー「ひらく、まぜる、うまれる。」というコンセプトには、どのような思いが込められているのでしょうか?
この言葉には、スタートアップやベンチャー企業だけでなく、大企業、学生、地域住民、子どもたちまで、さまざまな人に開かれた場でありたいという思いが込められています。起業支援施設というと、どうしても限られた人のための専門的な場という印象を持たれがちですが、なごのキャンパスは最初からそうした枠に閉じない多様な場を目指してきました。
また、異なる立場や価値観を持つ人たちが混ざり合うことで、新しい産業やアイデアが生まれていく。そんな循環も、このコンセプトには込められています。
スタートアップ支援に特化しすぎるのではなく、小学校という地域の拠点性を引き継ぎながら、新しい産業やビジネスも生み出していく。その両方を成り立たせることが、なごのキャンパスの役割として考えられてきました。
その結果として、事業を育てる人たちだけでなく、地域の人たちや子どもたちも巻き込んだイベントが行われるようになり、「ひらく、まぜる、うまれる。」という言葉が、少しずつ実体を伴ったものになってきたと感じています。
起業家から地域住民まで多様な人が交わる「なごのキャンパス」

ー実際のなごのキャンパスの利用形態についてお伺いしたいです。
なごのキャンパスには、コワーキング、シェアオフィス、教室単位での入居など、いくつかの利用形態があります。そのなかでも比較的多いのが、コワーキングやシェアオフィスを利用する小規模事業者や個人で活動する人たちです。
特になごのキャンパスで特徴的なのは、単に作業場所を求めているだけではなく、交流も求めている人が多い点です。ひとりで事業を始めたばかりの人や、自分のビジネスを育てながら他の利用者とのつながりも大切にしたい人にとって、ちょうどいい距離感の場所になっている印象です。
大きな成長や大規模な資金調達を強く目指す起業家ばかりではなく、まずは自分の仕事を着実に築いていきたいという人が多いとも感じます。
―入居企業や利用者の方には、どのような特徴がありますか?
利用者は大企業が地域との接点を求めて関わるケースもありますが、スタートアップはもちろんのこと、個人や小規模事業者が主になっています。
名古屋という土地に根ざしながら、新たな挑戦を生み出していくためには、単にオフィスを構えるだけでなく、地域との距離が近い場所があることが重要です。そのため地域とつながりたい企業や、多様な人たちとフラットに交わりたい企業の方々にも、よく利用されています。

ー小学校ならではの体育館や教室は、どのように活用されているのでしょうか?
体育館は特に人気が高く、さまざまな用途で利用されています。
名古屋の駅に近い場所でドローンを飛ばせる施設は珍しく、「なごのキャンパスの体育館を利用したことがある」という名古屋のドローンスクールが多いと思います。ほかにも、近隣の専門学校や通信制高校による授業での利用や、社会人のバスケットボールなどのスポーツでの利用、会社単位での運動会や子ども向けスポーツ教室など、幅広く利用いただいています。
また、教室は会議室やイベントスペースとしての利用も多く、施設全体としてレンタルスペースの需要はかなり高いと感じています。
ー給食室を活用したカフェ「yoake」は、地域との接点としてどのような役割を果たしているのでしょうか?
1階にあるカフェ「yoake」は、利用者だけでなく一般の方も多く訪れる場所でランチタイムや土日には、行列ができることもあります。
なごのキャンパスの取り組みを知らなくても、「那古野小学校の中にあるカフェ」としてカフェを目的に訪れる地域の方も少なくありません。体育館の利用後に立ち寄る人や、家族連れで利用する人も多く、地域のさまざまな人たちが自然に集まる場所になっています。
なごのキャンパスの地域との関わりや役割

―カフェや体育館からなごのキャンパスを利用する方も多いとのことですが、地域との関わりはどのように広がっているのでしょうか?
地域との連携も、なごのキャンパスの大切な役割です。
商店街と連携したイベントや地域のお祭りに合わせた企画などはこれまでも多く行われており、特に秋にはファミリー向けや子ども向けのイベントも数多く開催しています。
地域の中には、カフェを利用したことがある人、体育館を使ったことがある人、イベントに参加したことがある人など、何らかの形でなごのキャンパスに触れたことのある人が数多くいます。
スタートアップ支援施設という枠組みだけではなく、地域の人たちが気軽に関われる入口を持っていることも、なごのキャンパスの大きな特徴です。
名古屋のスタートアップエコシステムを支える「場」としてのなごのキャンパスの存在

ー名古屋で起業するうえで、なごのキャンパスはどのような役割を担っているのでしょうか?
名古屋はこれまで、スタートアップが育ちにくい地域だと言われてきました。
背景には、大企業や地場産業の存在感が大きく、スタートアップという選択肢が目立ちにくかったこともあります。
そうしたなかで重要になるのが、人や情報が集まる「場」の存在です。
人が集まれば情報が集まり、イベントが生まれ、コミュニティが育っていきます。さらに教育や新たな挑戦の機会も生まれ、地域のエコシステムが形成されていきます。
なごのキャンパスは、スタートアップを直接育成する場所というよりも、そうしたエコシステムを支える土壌として機能してきました。
名古屋駅から近く、県外から訪れる人も立ち寄りやすい立地でありながら、旧小学校ならではの親しみやすさも併せ持っています。
少し懐かしさを感じる校舎だからこそ、肩肘張らずに交流できる空気があり、それが人と人をつなぐきっかけにもなっています。
ローカルに根ざした共創プラットフォームへ

―今後、なごのキャンパスをどのような場にしていきたいと考えていますか?
なごのキャンパスが今後目指しているのは、「ローカルにコミットし、多様な社会とフラットにつながる共創プラットフォーム」です。
そのなかでも特に重視しているのが、名古屋という地域に根ざすことです。
名古屋に関わりたい人、名古屋を盛り上げたい人、この街で何かに挑戦したい人が気軽に集まれる場所であり続けたいと考えています。
入り口は必ずしも起業やビジネスである必要はありません。
カフェの利用でも、体育館の利用でも、コワーキングスペースのドロップイン利用でも構いません。多様な人たちがゆるやかにつながりながら、新しい挑戦や交流が生まれていく。
ものづくりに限らずコトづくり、この街で何かを生み出したい人、交流しながら新しい動きをつくりたい人の土台となる場所として、なごのキャンパスはこれからも地域とともに歩み続けていきます。
まとめ
今回の取材を通して見えてきたのは、なごのキャンパスが単なる起業支援施設ではないということでした。
旧那古野小学校という歴史ある場所を受け継ぎながら、事業を育てる人たち、地域で暮らす人たち、さまざまな立場の人々が自然に交わる拠点として機能している。その姿は、「ひらく、まぜる、うまれる。」という言葉そのものです。
カフェに立ち寄る人も、体育館を利用する人も、ここで仕事を始める人も、それぞれがこの場所の一部になっていくというさまざまな人と人の交わりの積み重ねが、共創の土壌を育てていくのだと思います。
なごのキャンパスはこれからも、名古屋のまちに根ざしながら、新しいつながりや挑戦を育てる場として存在感を深めていくのではないでしょうか。
<なごのキャンパスの紹介(名古屋市内)>
NAGONO CAMPUS(なごのキャンパス)
住所:愛知県名古屋市西区那古野2丁目14-1
アクセス:名古屋駅 桜通口より徒歩8分
営業時間:平日10〜21時/土日祝10〜18時
※シェアオフィス、プライベートオフィスは全日24時間利用可能
※カフェ「yoake」の営業は上記と異なる場合があります

RENA
ライター

