戸塚区名瀬町の「久右衛門邸 納屋カフェ」。築150年の納屋で、季節を感じる上品なデザートを堪能。
緑豊かな里山の中に、築150年の納屋を改装したカフェ「久右衛門邸 納屋カフェ」があります。道路から離れているせいか驚くほど静かで、店内に流れるクラシックのBGMとアンティークの家具が非日常空間を演出してくれます。窓の外では、木の葉がひらひらと落ち、木漏れ日に照らされる様子にしばし見入ってしまいました。
隣に建つ築189年の古民家フレンチレストラン「久右衛門邸」と共に、就労継続支援B型事業所として運営されているこのカフェ。
看板メニューは、和三盆ぷりん、フルーツあんみつ、旬のフルーツをふんだんに使ったパフェなど、季節を感じられるデザートが評判です。2024年12月23日のオープン以来、四季折々の庭園を眺めながらゆったりと過ごせる場所として、多くの人に親しまれています。
今回は、就労支援員として働き始め、現在はカフェのキッチンに立つ土岐恵子さんにお話を伺いました。

「デザートに力を入れたい」と始まったカフェ
「カフェを始めようと思ったきっかけを教えてください。」
もともとは、母屋のフレンチレストランのみでしたが、オーナーの希望もあり、デザートに力を入れていくことになりました。コンベクションなどの機材を入れて、納屋ですべて作れるようにしてカフェを始めました。

「メニューはデザートのみですか。」
1種類だけサンドイッチを用意しています。デザートだけよりも、軽食があった方がいいかなと。がっつりしたものではなくて、簡単なものです。
「サンドイッチをメニューに入れたのはどうしてですか。」
少ないですが、ランチにいらっしゃる方もいるので。お昼前に来てサンドイッチを食べて、しばらくしてからデザートも召し上がるお客様もいます。
一番多いのは、午後2時ぐらいからデザートメインで来られる方ですね。
ドリンクメニューへのこだわり
「ドリンクメニューもかなりこだわっていらっしゃる印象がありました。定番のものだけでなく、アレンジも豊富ですよね。」
台湾茶やチョコレートドリンクなど、少し珍しいものも取り入れています。基本的には、デザートの邪魔をしないようには意識をしていますね。
「季節の素材を使ったドリンクもあるそうですね。」
そうですね。この敷地内で梅が採れるので、それを使った限定メニューを出したりもします。
築150年の納屋と189年の久右衛門邸
「こちらの建物は築何年ぐらいになるんですか。」
納屋は150年ぐらいと聞いています。母屋の久右衛門邸の方は189年、天保七年に建ったそうです。

「保存状態が本当に素晴らしいですね。」
元々天井があったのですが、それを抜いて今の形になりました。屋根の梁が見えて趣がありますよね。
「内装についても伺いたいのですが、これはオーナーさんのこだわりでしょうか。」
オーナーのご主人がアンティークの会社をされているんです。テーブルや椅子、照明、絵画に至るまでアンティーク調で揃えました。椅子は座り心地が違うので、好きなお席を選んでいただいています。


「客層はどのような方が多いですか。」
50代、60代の方が多いですね。土日にはお子様連れの方も、たまにいらっしゃいますね。常連の方も多く、よく来てくださる方とのおしゃべりもささやかな楽しみです。
3品の人気メニューと食材へのこだわり
「人気メニューを教えてください。」
和三盆ぷりん、フルーツあんみつ、パフェ。この3つが上位です。パフェは「ほうじ茶とバナナのぱふぇ」以外は土日限定になっています。
たまに「平日はやっていないんですか?」という声もあるのですが、フルーツは1週間ほど追熟させたいものもあるので、毎日出そうとすると仕込みの関係で難しいんです。ですので、今は土日に限らせていただいています。

「食材へのこだわりについても伺いたいのですが、プリンに関しては和三盆を使われているのでしょうか。」
はい。柔らかさというか、口当たりの優しさが出るんです。和三盆は日本の砂糖ですし、古民家の雰囲気にも合っているかなと思っています。カラメルにも和三盆を使っています。
「フルーツあんみつのこだわりはありますか。」
寒天ではなく「パールアガー」を使っています。海藻由来の凝固剤という感じです。ゼリーと寒天の中間くらいの食感で、もちもちでぷるぷるしています。透き通っているのが特徴で、キラキラしているんですよ。


「パフェは季節ごとに新メニューを考えられているんですか。」
特に決まったルールはないのですが、パフェに関しては季節のフルーツを使って、1〜2ヶ月のスパンで新しいものを出せたらいいなと思っています。スタッフみんなに食べてもらって、2〜3回ほど手直しをしながら決めている感じです。
「敷地内で採れたフルーツも使われているそうですね。」
梅、ゆず、ブルーベリー、山桃などを使っています。去年はプラムもあったのですが、今年は採れませんでした。採れたものをその都度、その時期に合わせて使っています。
レストランのデザート担当から支援員、そして再びキッチンへ
「土岐さんはずっとパティシエをされていたんですか。」
いえ、もともとパティシエがいたのですが、退職されたので、それからは私がキッチンに入っています。若い頃にレストランでデザートを担当していた経験があったので任せてもらえました。
「もともとは飲食業をされていたんですね。」
ずっと飲食業をやっていて、一度違う仕事をしてみようと思いました。それでいろいろ探した結果、始めは支援員として入ったんです。ここはB型の就労施設なので利用者さんのお手伝いをする仕事をしていました。あまり深く考えずに飛び込んだ感じです。家が近かったことも決め手になりました。
「支援員というのは、資格が必要な仕事なんですか。」
資格はいらないです。利用者さんがまず一人で作業をして、それを支援員がサポートするような形ですね。
「実際にやってみて、いかがでしたか。」
やってみて捉え方も変わりましたし、入って良かったなと思っています。全く別の世界があって、その奥深さを感じますね。
利用者さんとのコミュニケーションでは、何をどこまで伝えるか、悩むこともありますが、自分の成長になっています。それぞれの個性があるので、楽しくもありますね。

就労継続支援B型事業所としてのカフェづくり
「B型事業所としてリニューアルされた経緯もお伺いできますか。」
私はリニューアル後に働き始めたのでそれ以前のことは分からないですが、ここは場所的に、通常の飲食業としては営業ができない地域だと聞いています。ただ、福祉施設としてであれば営業ができるので、事業所としてレストランを運営する形にリニューアルしたそうです。
「就労支援の利用者さんは、こちらのカフェでも活動されているんですか。」
お冷やおしぼりのお渡し、メニュー出し、お水のおかわりなどをしてもらっています。将来的には、焼き菓子作りも利用者さんに関わってもらえたらうれしいですね。


「土岐さんがカフェのキッチンで働きながら、利用者さんのサポートもするんですか。」
今はキッチンを私一人でやっているので、支援員としては働いていないんです。他の支援員が一人ずつついてくれる形ですね。
利用者さんと一緒にキッチンで働きたいと思っていたら、やりたいと手を挙げてくれた方がいたんです。近々入られる予定なので、とても楽しみにしています。
貸切も可能。地域とのつながり
「お店の予約は出来るのでしょうか。」
今は予約は受け付けていません。ただ、貸切利用は可能です。直近ですと、落語のイベントが開催されます。あとは、町内会のイベントなどにも使用していただいていますね。演奏会をしたこともありました。
「他にも地域とのつながりはありますか。」
マルシェにお店を出したり、地域のイベントに出展することもあります。名瀬祭りや、東戸塚の桜祭りなどですね。出展するのは利用者さんが作ったものが中心です。店内でも販売しているんです。

利用者さんとの楽しい職場づくりを目指す
「今後やってみたいことなどはありますか。」
利用者さんがもっと増えて、みんなでワイワイ一緒に働けたらいいなと思っています。基本的には「まずやってみよう!」というタイプなので、これからも利用者さんと新しい挑戦をしていきたいですね。
デザートを実食!
和三盆ぷりん

看板メニューのひとつ、「和三盆ぷりん」をいただきました。今回は旬のナガノパーフルというぶどうと、いちじくが添えられていました。
皮ごと食べられるナガノパーフルは甘さがありみずみずしく、プリン本体は和三盆ならではのふんわりと優しい甘さ。口に入れた瞬間になめらかに溶けていく感覚でした。
カラメルにも和三盆が使われていて、こちらは奥深い苦みが特徴。しっかりとした苦みのあとにほんのり甘みが残ります。大人の味わいのカラメルが、プリンの甘さを際立たせていました。
カラメルは後がけなので、自分の好みでかける量を調整できるのもうれしいポイントです。
ほうじ茶とバナナのパフェ

ワイングラスに入っている珍しいパフェ。バナナの甘さとほうじ茶アイスが溶け合い、甘くなりすぎない上品な味わいに仕上がっています。ほうじ茶の香りがほんのりと、鼻に抜けるように感じられました。
食べ進めると、中からホイップクリームとグラノーラが登場。ホイップクリームも甘さ控えめで、グラノーラの食感が満足感を加えてくれます。
最後にはほうじ茶のブラマンジェがあり、もう一度ほうじ茶の風味を楽しめる仕掛け。ひと口ごとに、ほうじ茶の香りを感じたあと、甘さと茶葉の風味が混ざり合います。縦に食べ進めることで食感の違いも楽しめる、まるでひとつの作品のように計算された一品でした。
さいごに
お話を伺いながら印象的だったのは、土岐さんの明るい雰囲気と「まずやってみよう」という姿勢でした。飲食業から離れようとして出会った支援員という仕事、そしてまたキッチンに戻ってお菓子作りをすることになった巡り合わせ。環境が変化しても、楽しみながら進んでいく姿が、常連さんに愛されるお店を創り上げているように感じました。

日々の喧騒から離れて四季折々のお庭を楽しみながら、季節のデザートをゆっくり味わう。そんな時間を過ごしたくなったら、ぜひ久右衛門邸 納屋カフェに足を運んでみてはいかがでしょうか。
久右衛門邸 納屋カフェ
住所:神奈川県横浜市戸塚区名瀬町2026番地
電話:045-392-3200
営業日:水・木・金・土・日(臨時休業や貸切の場合もあるためInstagramにて要確認)
営業時間:11:00~18:00(LO 17:00)
座席数:4テーブル・16席
駐車場:あり
予約:不可(貸切利用は要相談)

森田かえ
取材ライター

