福岡|ばあちゃんのおいしいランチが味わえる〜ばあちゃん喫茶1号店〜「春日まちづくり支援センター・ぶどうの庭」
いまやメディアやSNSでも大きな話題となり、全国的に注目を集めている“ばあちゃんビジネス”。
超高齢化社会を迎えた日本において、シニア世代の生きがいづくりと働く場を生み出すこの取り組みは、今まさに新しい地域社会のあり方として強い脚光を浴びています。
今回は、これからフランチャイズ(FC)展開により全国区へどんどん広がっていくであろう期待の兆しに満ちた「ばあちゃん喫茶」、1号店へとお邪魔してきました。

ばあちゃんたちの知恵とアイデアが詰まった身体にやさしいごはん
取材にうかがったのは、ランチタイムも終盤を迎えた14時すぎのこと。
お店の賑わいも一息ついた頃合いだったからでしょうか。ちょうど厨房奥から和やかな声が聞こえ、ばあちゃんたちの楽しそうなランチタイムが始まりました。
たまたま近くのお席にご一緒させていただいたのですが、そこから自然と耳に入ってくるばあちゃんたちの会話が、なんともチャーミングでおもしろいのです。

「今日のごはんには玉ねぎがたくさん入っとるよ。玉ねぎをたくさんもらったから、もう全部入れたけんね〜」と一人のばあちゃんが笑顔で言えば、「今日こそは中華にしようと言っていたんだけどね、ほら気がつけばまた和食になっとる。ワハハ〜」と、別のばあちゃんが豪快に笑い声をあげます。
さらに話は深まり、「お酒のおつまみに焼きひもをもらったんだけど、これを食べよったらあごが痛くなるけん、ここに持ってきたったい。みんなで食べようと思って。だけど、この炊き込みごはんに入れたらいい出汁
ができるかなーと思ったら、なかなかいい味になっとるね」「あ、そのごはんには鶏ガラスープも入っとるんよ」と、話の引き出しは尽きることがありません。
最初はおとなしく聞き耳を立てていた筆者でしたが、その楽しそうな輪につられて気づけば会話の中に飛び込んでいました。
実は、この日にいただいた炊き込みごはんを口に入れた瞬間、心の中で強烈な驚きを感じていたのです。「何? この深みのある独特のコクは……? いりこでもないし、かつお節の風味とも違う。かといって舌に妙な不自然さが残らないから、化学調味料や添加物の味でもない。一体なんなんだ、この旨味の正体は!?」と。
その答えは、実に大らかで、職人顔負けの発想から生まれたものでした。謎のコクの正体は、なんとばあちゃんが持ち寄った「焼きひも」。「もう現物は使ったからないけれど、ほらコレを入れたのよ」とスマホの画像を見せてくれました。

そのまま食べるには固かった焼ひもをハサミで細かく刻み、ニンジンやシメジ、たっぷりの玉ねぎと一緒に炊き込むことで、極上の天然出汁へと変身させていたのです。生活の知恵と自由な発想から生まれたこの隠し味には、思わずひれ伏してしまいました。
この日のランチメニューは、驚きの炊き込みごはんを中心に、旬の野菜がたっぷり入ったおすまし、プリッとしたエビチリ、ジューシーなハンバーグのナス包み、新鮮な野菜に手作りドレッシングがかかったサラダと、品数も豊富。

これで950円(税込)というから驚きです。どれをとっても素材の味がいきており、ばあちゃんたちの愛情と優しさが五臓六腑にしみわたるような味わいでした。
なお、「ばあちゃん喫茶」は毎週土曜日の11時30分~15時に営業中。ランチは事前予約制で数量限定となっていますので、気になった方は早めのご予約をおすすめします。
福岡から全国へ、ばあちゃんビジネス拡大中!
この温もりあふれる「ばあちゃん喫茶」を力強くサポートしているのが、福岡発のソーシャルビジネスとして話題をさらっている「うきはの宝株式会社」代表・大熊充さんです。大熊さんの情熱や取り組みの歩みについては、著書『年商1億円!(目標) ばあちゃんビジネス』(小学館)でも詳しく綴られています。

地域におけるシニア世代、特に75歳以上のばあちゃんたちが直面する「孤立」や「経済的・精神的な困窮」。大熊さんは、彼女たちが長年培ってきた調理の技術や生きている知恵を価値に変え、生き生きと働ける“活躍の場”を創出してきました。
今回伺った「春日まちづくり支援センター・ぶどうの庭」は、まさにその構想から生まれた「ばあちゃん喫茶の1号店」という重要な拠点です。

店内には近所のお客様はもちろんのこと、ソーシャルビジネスの現場を学びたいと願う方々や近隣の大学教授、さらには全国各地から視察に訪れる人や、取材陣も多く、穏やかな熱気に包まれています。
そして2026年7月、この取り組みを全国へと広げるフランチャイズ(FC)展開が正式に発表されました。発表直後から全国の方々から問い合わせが殺到しているそうで、今後「ばあちゃん喫茶」の温かい輪が日本中に広がる未来はすぐそこまで来ています。
うきはの宝による“ばあちゃんビジネス”の魅力は、喫茶だけに留まりません。素材の甘みを引き出した「干し芋」や、履き心地抜群の「もんぺ」といったオリジナル商品の開発をはじめ、大企業とタイアップして明治おいしい牛乳の紙パックで作った「MILK BAG」など、多角的なアイデアで拡大中。また、こういったばあちゃんたちの活動は『月刊ばあちゃん新聞』で記事化され販売。ばあちゃんたちの日々の活力にもなっています。


子ども食堂からばあちゃんに触発されたカンレ喫茶、コキッチャまで
話を再び「春日まちづくり支援センター・ぶどうの庭」へと戻しましょう。
この「ぶどうの庭」は、土曜日のばあちゃん喫茶だけでなく、平日から週末にかけて多彩な活動や地域イベントが目白押しの魅力的なスペースです。
食やカフェの取り組みだけでも実にユニーク。フリースクールに通う子どもたちが自ら包丁を握って切り盛りする子ども食堂「フルフル食堂」や、鹿児島出身のふたりのママが、丁寧にひいた出汁を生かした鹿児島の家庭料理を作る「さつまおごじょ飯」など、日替わりで営業しています。
なかでも思わずクスッと笑ってしまうのが、ばあちゃんたちの生き生きとした姿に刺激を受けた地域の人々が立ち上げたという取り組みです。還暦(60歳)を迎えた男性陣がこだわり深煎りコーヒーを丁寧に淹れる「カンレ喫茶」や、さらにはその還暦に触発された古希(70歳)の方が香ばしい焼き立てピザを提供する「コキッチャ」まで登場。ネーミングセンスの秀逸さも相まって、訪れる人を笑顔にしてくれます。
「ランチやカフェの時間を地域のみなさんにゆったり楽しんでもらうため、あえて午前中に趣味の集まりやカルチャー教室の予定を入れているんです。みなさんここでしっかり学んで、おいしいごはんを食べて、たくさん話して笑って帰られますよ」と語ってくれたのは、同センター理事の太田まゆみさん。
ぶどうの庭は、単なるレンタルカフェの枠を超え、シェアオフィスやクリエイター向けスペース、週替わりのギャラリーなども併設されています。

「ただ場所をお貸しするだけでなく、ここに人が集い、自然と交流が生まれ、自分たちの夢や活動について語り合うことで、次のステップへ一歩踏み出せる。そんな温かい循環が生まれる場所になりました」と太田さんは目を輝かせます。単なる“地域の拠点”という言葉だけでは括りきれない、人々の生きがいや繋がりが芽吹く優しさに満ちた居場所が、確かにここにありました。

まとめ
「春日まちづくり支援センター・ぶどうの庭」を初めて訪れて最も強く心に残ったのは、そこにいる誰もがとびきりの笑顔を浮かべていたことです。
厨房で腕を振るうばあちゃんたちは、口角がプリッと上がったまま終始楽しそうに笑い合い、お喋りに花を咲かせていました。最初は控えめで少し遠慮がちだったばあちゃんも、お店に立つうちにどんどん明るくなり、今では自ら進んでお客さまへ話しかけるようになったそうです。
誰も寂しくない。みんなで集まれば、毎日がこんなにも楽しい――。
職人のような知恵が詰まったおいしい手作りランチと、ばあちゃんたちの弾けるような笑顔に会いに、今週末は「ぶどうの庭」へお出かけしてみませんか。五感も心もぽかぽかと温まる、最高に幸せなひとときが待っています。
春日まちづくり支援センター・ぶどうの庭(ばあちゃん喫茶1号店)
運営会社:うきはの宝株式会社
住所: 福岡県春日市須玖北5−155
営業日時: 9:30〜17:00/ばあちゃん喫茶は毎週土曜日 11:30〜15:00
定休日:日祝日
駐車場: あり
アクセス:西鉄・井尻駅から徒歩約16分

名原 和見
ライター

