隅田川の歴史ある橋4選「蔵前橋/厩橋/言問橋/駒形橋」について調査
隅田川には合計で30本以上の橋が架かっており、総称して「隅田川橋梁群」と呼ばれています。
様々な工法、多様な形状、豊かな歴史を持った橋の数々。
多くの個性的な橋があり、それぞれにそこから見える景観も異なり、散策コースにもぴったりです。
今回はその中から4本の橋をご紹介したいと思います。
蔵前橋
墨田川には多くの橋が架かっていますが、その中に蔵前橋という橋がかかっています。
西岸は台東区、東岸は墨田区にかかる黄色の橋です。
現在の「蔵前橋通り」にあり、橋名は地名に由来しています。
1927年に蔵前橋が架橋されるまでは、「富士見の渡し」と呼ばれる渡船場がありました。「渡し」とは渡し舟・渡船場のことです。
江戸時代には橋の架橋が制限されていたため、多くの「隅田川の渡し」が存在しました。
明治時代初期には20以上の渡しがあったそうです。
「富士見の渡し」は舟の上から富士山が良く見渡せたことからこの名が付いたと言われています。
江戸幕府の米蔵が近くにあったため、「御蔵の渡し」とも呼ばれていました。
この御米蔵は、元和年間に大川端を埋立てて建てられ、最も多い時には数十棟もの蔵が建ち並んでいたそうです。
江戸時代から関東大震災の発生前まで実際に運行されていましたが、震災で消滅してしまい、以降渡しが再開されることはなく、震災復興事業によって蔵前橋がかけられました。
橋の欄干には横綱のレリーフが施されており、これは、以前蔵前橋の西岸に蔵前国技館があったことに由来します。
現在では国技館は蔵前から両国に移り、ご存じの両国国技館となっています。
厩橋
厩橋も西岸が台東区、東岸が墨田区にかかる橋です。
この橋は1874年に木製の橋がかけられたことに始まると伝えられていますが、老朽化から1893年に鉄橋へと架け替えられました。
特筆すべきはやはりその外観です。
隅田川に架かる橋で唯一、3連アーチという形状の橋になっています。
隅田川のクルーズではこの橋の下を通ることもできますよ。
厩橋は、元々、元禄年間から続いていた「御厩の渡し」があった場所です。
「御厩河岸の渡し」とも呼ばれていました。
この渡しは転覆事故が多かったため、木製の「厩橋」が架けられることとなったのです。 しかし、最初の橋はなんと民間で作られたものでした。
この「御厩の渡し」は歌川広重「名所江戸百景」では第54景となる錦絵「浅草川首尾の松御厩河岸」にも描かれています。
この絵の中には舟遊びの情景が描かれていますが、実は舟遊びは第2次世界大戦、戦後の河川汚染などもあって衰退してしまいます。
現代のような屋形船が復活したのは、昭和の終わり頃からなのです。
言問橋
言問橋も西岸は台東区、東岸が墨田区に架かる橋です。
こちらも元々渡しがあった場所に架けられた橋で、元々は「竹屋の渡し」という渡船場がありました。
「竹屋の渡し」は「向島の渡し」とも呼ばれ、「竹屋」は近くにあった茶屋の名前に由来すると言われています。
江戸時代、この付近は桜の名所で、花見の時期には大変な賑わいを見せたそうです。
現在では、台東区スポーツセンター広場に渡し跡の碑があります。
ところで、言問橋の「言問」という名称は在原業平が詠んだ、
『名にし負はばいざこと問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと』
という歌に因んでいる、とされていますが、実際には諸説あり、実はこの歌は白髭橋のあたりの出来事ではないかとも言われています。
また、言問橋は東京大空襲の際には、逃げ惑う人々を炎が包む大変な惨事の現場となった橋です。
当時の面影は両岸の石柱の黒い焼け跡に色濃く残っています。
駒形橋
駒形橋の名前は西岸の飛地境内にある「駒形堂」に由来します。
ここは、浅草寺縁起で伝わる浅草寺本尊・観世音菩薩が示現された、浅草寺ゆかりの地なのです。
「駒形堂」は浅草寺の小堂で、本尊は毎月19日の縁日に開扉され法要が行われています。
かつて、駒形橋と吾妻橋の間には「駒形の渡し」があり、吾妻橋の架橋によって利用者は大きく減ったようです。
1876年(明治9年)までは運行されていた記録があり、架橋によって無くならなかった珍しい渡船場でした。 しかし、駒形橋が架橋されると同時にこの渡しも無くなってしまいます。
「駒形の渡し」は吉原通いの遊び人が使う代表的な渡しで、船を降りた人々は土産を買って吉原へと繰り出していったそうです。
仙台藩62万石の大名伊達綱宗(伊達政宗の孫)も、「駒形の渡し」からせっせと吉原通いをしていたという話もあります。
きっと西詰で紅を買って懇意の遊女の元に通ったことでしょう。
まとめ
まだまだたくさんの橋がありますが、今回はここまで。
多くの歴史と江戸時代の面影を残した隅田川にかかる橋の数々。
少し背景を知ってから歩くとまた違った顔が見えてきそうですね。
きらきらと水面が光る隅田川を眺めながら歴史の残り香を感じてみてはいかがでしょうか。
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