台東区に住まいを持った3人の文豪「森鴎外/夏目漱石/樋口一葉」の生い立ちや晩年について
台東区には、今も昔も多くの文化人が居住しています。 落語家や演劇作家、芸人や画家、小説家など、幅広い文化人の住まいとなってきたのです。
今回は、かつて台東区に住んでいたことのある小説家「森鴎外」「夏目漱石」「樋口一葉」を紹介します。
森鴎外
森鴎外はかつて金杉村(現在の根岸二丁目)、上野花園町(現在の池之端三丁目)に住んでいました。 現在では、その住居は「水月ホテル鷗外荘」として、一般に公開され宿泊することができます。
さて、台東区に居を構えた小説家森鴎外とはいったいどのような人物だったのでしょうか。
<生い立ち>
森鴎外は、1862年2月17日、現在の島根県で生まれ、本名は本名は森林太郎と言います。
森家は代々津和野藩の典医を務める医師の家系で、嫡男として生まれた鴎外は、幼いころから論語や孟子、オランダ語などを学んでいました。
島根県で生まれた鴎外がどのような理由で東京までやってきたのでしょう。
1872年、廃藩置県をきっかけに10歳で父と上京し、現在の墨田区東向島に住むことになります。
その後、1873年、入試を受けて、「第一大学区医学校・東京医学校(現在の東京大学医学部)」予科に実年齢より2歳多く偽り、12歳で異例の入学を果たしました。
衝撃的な頭の良さですね。
<鴎外、舞姫を書く>
大学卒業から約半年後、鴎外はプロイセン王国の陸軍衛生制度に関する文献調査に従事することになります。
それから約2年、衛生学を修めるとともにドイツ帝国陸軍の衛生制度を調べるため、次はドイツ留学を命じられるのです。
ドイツからの帰国直後、ドイツ人女性が来日して滞在1か月ほどで帰国してしまうという出来事があり、これは小説「舞姫」の素材の一つとなりました。 第一作とされる小説「舞姫」を書き文壇にデビューした時、鴎外は池之端に住んでいました。
「舞姫」はドイツ留学中に出会った女性をモデルにして書いたと言われています。
その来日してすぐ帰国させられてしまった女性こそが「エリス」のモデルではないか、ということです。
決してハッピーエンドとは言えない「舞姫」ですが、「エリス」との思いを果たすことができなかった鴎外の心中はいかに。
かつての住居を訪れてみれば、その思いの一端に触れることができるかもしれませんね。
夏目漱石
夏目漱石は浅草諏訪町(現在の駒形一丁目)で育ちました。
<生い立ち>
1867年2月9日、現在の新宿区で生まれ、本名は夏目金之助といいます。
間もなくして、養子に出された先が現在の台東区でした。
しかし、実家も養子に出された先もかなり複雑な家庭で、何度も実家と行ったり来たり。
この間に浅草寿町戸田学校(現・台東区立蔵前小学校)に通っている時期もありました。
晩年の小説「道草」 浅草での生活は、小説「道草」でも描かれています。
養父母との複雑な関係や、「吾輩は猫である」を執筆していた当時の生活などを書いた自伝的な小説で、晩年の漱石が、胃潰瘍に苦しみながら連載を続けた作品です。
執筆のさなかには糖尿病にも悩まされ、翌年亡くなりました。
ちなみに、なんと現在でも漱石の脳はエタノールに漬けられた状態で東京大学医学部に保管されているそうです。
ちょっと見てみたい気もします…
樋口一葉
樋口一葉は下谷御徒町三丁目(現在の東上野一・二丁目)、上野西黒門町(現在の上野一丁目)、下谷龍泉寺町(現在の竜泉三丁目)に住んでいたことがあります。
<生い立ち>
一葉は1872年5月2日、現在の千代田区で生まれました。 幼少期から頭が良く、言葉を話し始めるのも早かったそうです。 小学校に4歳で入学しますが、幼過ぎるため退学します。 8歳の頃に家族で御徒町に居を移しました。
一葉が16歳の時には兄が、17歳で父が相次いで亡くなります。 妹と母の生活を一葉は一人で背負うことになったのです。 この頃は方々に借金をしながら生活し、その中で多くの原稿料を手にできる小説家を志します。
<たけくらべと晩年>
樋口一葉の作家としての人生は非常に短いものでした。 21歳の時、三宅花圃の紹介で、『文学界』創刊号に『雪の日』を発表。 その後、現在の台東区竜泉一丁目あたりに駄菓子屋を開業します。 この経験が後に大きく評価を受けることになる「たけくらべ」の題材となっているのです。
23歳の時、「たけくらべ」の連載が始まると、多くの小説を次々に掲載していきます。 そして、24歳の時、「たけくらべ」の一括掲載で森鴎外や幸田露伴といった文人に高く評価されました。 しかし、一葉はこの時肺結核におかされていました。 森鴎外の紹介で名医を紹介されるも手の施しようがなく、24歳6か月でこの世を去りました。
樋口一葉と言えば5000円紙幣に採用されていますが、女性として2人目で、1881年に発行された紙幣の神功皇后以来、実に123年ぶりのことでした。
台東区を歩いて、文豪たちも見ていた景色や空気、作中に出てくる風景を感じてみてはいかがでしょうか?
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