御徒町駅近にある、卵料理をメインにしたegg baby cafe。スイーツのエッグベイビープリンは、売切れになるほど人気
プリンが好きだった、17歳の夏、
少女は、はじめて恋をした。
「プリン、食べに行く?」
いつも一緒に仕事をしている、webデザイナーの彼女が突然、僕を誘ってきた。
彼女は、いま上野の御徒町にある、卵料理をメインにしたカフェ、egg baby cafeに親しげに通っていると言う。
そのカフェのエッグベイビープリンに夢中らしい。
「なぜ、そんなにプリンが好きなの?」
「私、17歳のころから、プリンが大好きなの。」
と、屈託のない笑顔で話す。
「いいよ、これから行こう。」と僕。
JR御徒町駅の賑やかな南口に降りて徒歩約2分、すぐegg baby cafeの場所がわかった。
シックなワイドガラスの扉を開けて店内に入る。
やわらかい雰囲気が感じられる広いシンプルな店内は、ほぼ満席だった。
ここのカフェは、席を確保してから、カウンターで注文する。
メニューは、ファッとしたエッグトースト、ジューシーなエッグベイビーサンド、オリジナル感溢れるエッグベイビーカルボナーラ、と。卵の美味しさを活かしたメニューが中心。
僕と彼女は、迷うことなく、エッグベイビープリンとアイスコーヒーをオーダーした。
「最近、よくこのカフェに来るの?」
「うん、よく通っているよ。プリンが、私の若いころの想い出のすべてなの。」
と、クリッとした瞳を輝かせて、彼女は話す。
彼女は17歳で、プリンにときめき、恋にときめいた時間を過ごしたらしい。
「17歳といえば、恋に憧れる年齢でしょ。スイーツにも目覚めるようになるし。」
最初は、コンビニエンス・ストアのプリンに夢中だったが。
近くのリーズナブルなカフェで好みのプリンを見つけてからは、よく行くようになったと言う。
そして、そのカフェの店員の男性に、彼女は恋をする。
彼は、週末になると彼女のためにプリンを取り置きしておいてくれるようになった。
彼は、週末、カフェのバイトをお休みにして。
そのお店で彼女は、彼と、プリンデートをするようになっていった。
お互いプリンを食べながら、将来の夢、将来の仕事、音楽、映画、雑誌、漫画、小説…彼女と彼はいろんな会話でときめいていった。
「私にとって、はじめてのちゃんとしたお付き合いだった(笑)。週末、いつもドキドキしながら、彼とのプリンデートは続いたの。」
そんなライトな会話を楽しんでいると、お目当てのエッグベイビープリンとアイスコーヒーが、テーブルにスッと運ばれてきた。
卵と生クリームを贅沢に使って仕上げ、ほろ苦いカラメルをたっぷりかけた、四角形のやや固めのプリン。
その上に濃厚な生クリームがスイーツ欲をそそるように絡みあっている。
思わず、スプーンでプリンを口に運ぶ。口の中でやさしく溶けていく。
卵のやわらかい風味が、口の中で香る。
彼女は、目をクリクリさせながら、満足そうにプリンを口に運んでいる。
「でも、受験勉強が忙しくなって、そのお店に行くことを、母に禁止されたの。辛かった。」
連絡があまりとれなくなり、自然消滅になりかけていたころ、彼から手紙が届いたと言う。
彼の手紙は、君が東京に行く前に、最後に逢おう。僕が君への最後のプリンを作る。駅で見送れないけど、プリンで君を見送るよ、という内容だった。
彼女は、東京の大学に合格していた。東京に行く日、お店に行き、彼に何か月ぶりかで逢った。
彼は、ちゃんと彼女の見送りのための最後のプリンを作って待っていた。
彼女は、無言で、彼との最後のプリンを食べたと言う。泣きそうになりながら、プリンを食べたと言う。
彼との最後のプリンは、泣きたいくらい甘かった。
egg baby cafe
住所:東京都台東区上野5-10-9
営業時間:10:00~22:00 (定休日なし)
電話番号:050-5596-7396
公式instagram:@eggbabycafe