“縄文以前”の日本へ!東京国立博物館特別企画「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」開催中
「縄文時代より前に日本に人間が暮らしていた」―― その発見のきっかけとなった出来事から、今年で80年を迎えます。
土器が登場する以前の日本列島で、人々はどのように暮らしていたのでしょうか。上野の東京国立博物館では、そんな日本の「旧石器時代」発見の原点となった岩宿遺跡の石器が集まる特別企画「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」が開催されています。
太古の昔、石器を手に日本に暮らした人々の営みに触れることができる、ロマンあふれる展覧会です。
「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」の見どころと魅力
「縄文より前」はこうして見つかった——岩宿遺跡発見の物語
「火山灰が積もった時代に、人が生きられるはずがない」——それが当時の日本考古学の常識でした。 昭和21年(1946)、群馬県の行商人・相澤忠洋は、岩宿の崖に光る黒曜石のかけらを見つけます。子どもの頃から考古学に興味があり、独学で学んでいた相澤は、行商の合間にコツコツと調査を進めていきました。

そんな一人の在野研究者の熱意が、ついに明治大学の若い研究者たちを動かしました。昭和24年(1949)の発掘調査で赤土の中から石斧が出土し、縄文時代以前——日本にも「旧石器時代」があることが初めて証明されたのです。

令和8年(2026年)は、その発見から80年。東京国立博物館では、この歴史的な発見にまつわる資料を集めた特別企画「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」が開催されます。展示は5部構成で、発見の前夜から現代の復元研究までをたどることができる充実の内容です。
見どころ① 発見のきっかけとなった本物の「石器」が勢ぞろい!
本展最大の見どころの一つが、相澤忠洋が採集し「旧石器時代の存在」を確信させた黒曜石製の「槍先形尖頭器(登録有形文化財)」です。今から約2万5,000年も前に作られた石器で、鋭利なかたちに整えられ、狩猟用の槍の先端やナイフとして使われたと考えられています。この石器の発見で相澤は旧石器時代の存在を確信したのです。

相澤が発見した「岩宿遺跡採集石器(登録有形文化財)」は、群馬・岩宿博物館に所蔵されており、本展で実物が展示されます。さらに、明治大学の学術調査で出土した重要文化財「岩宿Ⅰ石器文化」の石器群も展示されます。岩宿遺跡の石斧は刃先が磨かれた特徴的な石器です。従来は、磨製の技術は新石器(縄文)時代の特徴とされていましたが、今では日本の旧石器文化の特徴のひとつとして世界に知られています。

見どころ② 日本と世界の石器が並ぶ、唯一無二の展示空間
日本の旧石器時代は、世界史的にみると後期旧石器時代にあたります。人々はナウマンゾウやノウサギを狩猟し、移動しながら生活していました。 こうした石器は、そのような暮らしの中で発達してきた狩りの道具です。

当時の日本の研究者たちは、ヨーロッパやアジアの旧石器研究を参考にしていました。 今回の展示では、明治から昭和初期にかけて収集・寄贈された世界各地の石器が、岩宿の石器と同じ空間に並びます。岩宿遺跡を発掘した若き研究者が書籍で学んでいた、フランス・サン・タシュール遺跡採集のハンドアックス(前45〜35万年)、インド採集のクリーヴァー(前150〜20万年)の実物を日本の石器と比較しながら鑑賞できるのも見どころです。


見どころ③ ジオラマと復元狩猟具で3万5,000年前の暮らしを体感
「旧石器時代の人々はどんなところに住んでいたのか」——その問いに答えるのが、岩宿遺跡の景観を精密に再現したジオラマです。日当たりの良い水辺に移動式テントを立てて暮らしていた様子が立体的に再現されています。

また、現代の研究者が実際に石を打ち割って製作した狩猟具のレプリカも展示されます。これは「復元製作」と呼ばれる研究手法で、実際に製作することで当時の製作技術の解明が進められています。 石器がどのように使われ、人々の暮らしを支えていたのか、想像を膨らませながら展示を楽しんでみてはいかがでしょうか。


夏は上野のトーハクで旧石器時代の世界へ
一人の行商人の発見が、日本の歴史を大きく書き換えるきっかけとなった−−。その痕跡が今、上野の国立博物館に集まっています。3万年以上前の石器を目の前にしたとき、私たちの「縄文以前」への想像力は大きく広がるはずです。
本展は平常展料金で鑑賞でき、常設のコレクション展も楽しめます。広大な構内にはさまざまな展示があり、一日かけてじっくり鑑賞するのもおすすめです。高校生以下、満18歳未満、満70歳以上は無料なのも嬉しいポイントです。
この夏、東京国立博物館へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
開催概要&アクセス
展覧会名: 特別企画「ビフォー縄文 旧石器時代発見80周年」
会期: 2026年6月16日(火)〜8月23日(日)
会場: 東京国立博物館 平成館企画展示室
住所: 〒110-8712 東京都台東区上野公園13-9
開館時間: 9:30〜17:00(毎週金・土曜日、7月19日(日)は20:00まで)※入館は閉館30分前まで
休館日: 月曜日、7月21日(火)※ただし7月20日(月・祝)、8月10日(月)は開館
観覧料: 一般 1,000円、大学生 500円/高校生以下・満18歳未満・満70歳以上は無料

鶴丸 明
ライター

