【有形文化財】体の中に告げ口する虫が居る!?庚申塔ってなんだろう?

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こんにちは、とくらです。

日本は無宗教だと言われることもありますが、実は過去から現在に至るまで多くの民間信仰が存在してきました。

昔の人々の信仰は、慣習としてだけでなく石碑や像としてもその面影を現代に残しています。

皆さんは道端や寺社の境内で「庚申」と刻まれた石を見たことはありませんか?

これは、「庚申塔」と呼ばれるもので、かつてその場所に暮らした人々が当時の信仰に基づいて建立したものです。

さて、今回は台東区の文化財の中から有形民俗文化財「庚申塔」をご紹介します!




庚申塔

庚申塔とは、庚申塚とも呼ばれる庚申信仰に基づき建てられた石塔のことです。

庚申講と呼ばれる行事を3年間18回続けたことを記念して建てられることが多く、江戸時代初期から後期にかけて広く建立されました。

しかし、明治時代になると撤去が進み、高度経済成長期以降に行われた整備工事で残った庚申塔も多くが撤去・移転されてしまい、現存しているものは私有地内や寺院、当時から交通量が少ない道に置かれたものがほとんどです。

現在、台東区の区民文化財台帳には庚申塔が60基登録されており、江戸時代この土地に暮らした人々の信仰を今に伝える貴重な資料です。

台東区では、当時の地域に根差した信仰や、民衆の慣習を垣間見ることのできる資料の多くは都市開発や戦禍、震災によって失われてしまっており、その意味でも重要な文化財だと言えます。

下記が現在台東区の台帳に登録されている庚申塔の場所です。

区内でもかなりいろいろな場所に建立されていますね。

浅草寺(浅草2丁目3番1号)8基 本龍院(浅草7丁目4番1号)6基 万隆寺(西浅草3丁目27番22号)1基 慶養寺(今戸1丁目6番22号)1基 瑞泉寺(今戸2丁目17番3号)1基 宝蔵院(清川1丁目3番5号)2基 不動院(橋場2丁目14番19号)2基 小野照崎神社(下谷2丁目13番14号)9基 西蔵院(根岸3丁目12番38号)5基 世尊寺(根岸3丁目13番22号)1基 根岸小学校前(根岸3丁目9番7号)3基 不忍池弁天堂(上野公園2番1号)2基 五条天神社(上野公園4番17号)4基 林光院(上野公園15番9号)1基 真如院(上野公園15番17号)1基 金嶺寺(谷中1丁目6番27号)1基 西光寺(谷中6丁目2番20号)1基 多宝院(谷中6丁目2番35号)1基 天王寺(谷中7丁目14番8号)10基

引用:台東区公式サイト


庚申講・庚申信仰とは

庚申塔が建てられた地域には庚申信仰と呼ばれる民間信仰がありました。

これは、中国の民族宗教である道教に基づくものです。

人間の頭・腹・足には生まれたときから「三尸の虫」という上尸・中尸・下尸の3匹の虫がいて、常に人間の悪事を監視しており、庚申の日の夜、人が眠っている間に天に登り罪を天帝(閻魔大王とも)に報告すると言われています。

三尸によって罪を報告されると、その罪状によっては寿命が縮められたり死後地獄に落とされたりするのです。

わざわざ三尸が体を抜け出し告げ口をするのは、その人間が死ぬことによって肉体から解放されるため、寿命をなるべく短くしたいからだといいます。

確かにそれでは三尸としても、どんな小さな罪も見逃さず報告したいところですね…

しかし、人間としてはたまったものではありません。

寝ている間に三尸が出ていくのを防ぐために、庚申の日に皆で集まって徹夜をする行事として庚申講が生まれたのです。

この日は村の人々が集まり、酒盛りをしたりして夜を明かします。

庚申講は年に6回~7回行われ、これを3年間続けたことを記念して庚申塔が建立されたんですね。

日本では平安時代に始まったとされており、当初は公家や僧侶が行っていましたが、江戸時代に入ってからは庶民にも広まっていきました。

とにかく眠らないように、お茶を飲んだり太鼓をたたいたり、様々な工夫をしていたようです。

2か月に1回必ず徹夜をする日がやってくるのは中々大変そうですね…!

しかし、非日常を感じるこういった集まりを楽しみにしている村人も多かったのではないでしょうか。

庚申信仰が広く民間に広まったのは、信仰に関するイベントの楽しさもあったからかもしれませんね。

現在では庚申信仰自体は廃れてしまったものの、今でも名前を変えて庚申講を行っている地域もあるそうです。

もし地元に「朝まで寝てはいけない」と決まっている行事があったら、それは庚申講かもしれませんよ。




まとめ

庚申塔や庚申塚とも呼ばれる石塔。

現在では失われた慣習を今に伝えるとても貴重な資料であることが分かりました。

民間信仰からは、その時代その場所に生きた人々の実際の生活を感じ取ることができます。

こうした資料を未来にも大切に受け継いでいきたいですね。

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ライター紹介

とくらじゅん

イラストレーター・ライター

1991年生まれ。下町暮らしのフリーライター・イラストレーター。 妖怪イラスト、育児漫画、ADHDエッセイなどを書いています。
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