【下谷坂本の富士塚】日本一の山、富士山は意外と身近にあった!?縁起の良いちび富士山!
こんにちは、とくらです。
下町で暮らす私は、新幹線に乗るたびに車窓から思うのです。
「富士山って、いいなあ」と。
遠くから眺めても、なんだか尊い富士山。
高層ビルから見る富士山、新幹線から見る富士山、天気のいい日に遠くに見える富士山。
東京からでは小さくしか見えないのに、不思議と視界に探してしまう霊峰ですよね。
今では各地から毎年30万人もの登山者が訪れる日本一の高さを誇る名山。
そんな富士山のミニチュアが、台東区にも存在しているのはご存じですか?
今回は、下谷坂本の富士塚についてご紹介します。
富士塚とは
富士塚とは、江戸時代に作られた人工的な富士山のミニチュアのことです。
これは、富士山信仰によって作られたもので、この信仰は室町末期頃に起ったと言われています。
江戸時代中期には非常に盛んになり、江戸をはじめ、富士講(富士信仰をする集団)があちこちで結成されました。
それにともない、小さな富士山の模造も多数築かれ、江戸近郊の富士塚は50以上にもなりましたが、現在に残る富士塚は非常に少数です。
多くの富士塚は現代の庭園に見られるような築山と同じような手法で作られていたとされていますが、既に存在する丘や古墳をベースにしたり、富士山の溶岩を積み上げたりと、場所によってはいろいろな作り方がされています。
どうやら、築山当時には基本的に登頂すると富士山を見ることができるように作られていたそうですが、現在では高い建物が増え、ほとんどの富士塚から富士山をのぞむことはできないそうです。
富士山を模した山から富士山を拝む、というのはなんだかとてもありがたい光景…
高い建物が少なかったとはいえ、江戸近郊でも50カ所以上の場所から富士山を見ることができるように作っていたというのは驚きですよね。
富士山の登山道に見立てた通路や、富士山の噴火でできた洞窟(人穴)が再現されているものもあったりと、本当にミニチュア富士山という感じです!
今よりもはるかに富士登山をすることが難しかった当時、こうした工夫で富士山を身近に感じていたんですね…
近年は、富士塚の劣化を防ぐため、通常は登山が禁じられている場所が多いのですが、富士山の山開き(6月末~7月初め)にあわせて山開きをするところも多く、その期間は実際に登頂することができます。
比較的富士山へのアクセスが良くなったとはいえ、なかなか登山の難しい現代の私たちも、霊峰のパワーを感じることができそうです。
下谷坂本の富士塚
下谷坂本の富士塚は、重要有形民俗文化財に指定されています。
富士講の一派である「入谷東(山東)講」によって1828年(文政11年)、小野照崎神社の境内に築かれた富士塚です。
高さは約5m、直径約16m、富士塚の全体を富士の熔岩で覆った立派な造り。
塚の上には登山道があり、合目石を立て、1合目の岩屋に修験道の開祖「役行者」像、5合目付近に富士講の祖「角行」を祀る石祠が設置されています。
登山道を歩いていくだけでなんだかご利益がありそう…!
江戸時代にはもちろんトラックもないため、富士山から溶岩を運ぶため、相模川まで荷車などに載せて運び、相模川を船に乗せて下ってから江戸湾へと入り、隅田川などの川を船で運び、再び荷車で運ぶ…という大変な労力がかけられたと考えられています。
こうした大きなものを作る時にかけられた労力は、それだけでとてもありがたいものに感じますね。
現在でも小野照崎神社の境内でその姿を見ることができますが、普段は閉門されており、登ることはできません。
しかし、6月30日と7月1日に山開きが行なわれるので、この二日間は登頂することができますよ!
今年の夏は、霊験あらたかな下谷の小さな富士山に登ってみませんか?
下谷坂本の富士塚(小野照崎神社境内)
住所:東京都台東区下谷2-13-14
アクセス:東京メトロ日比谷線【入谷駅】徒歩3分
JR山手線【鶯谷駅】徒歩7分
江戸七富士
都内近郊では「江戸七富士」という、特に有名な七つの富士塚を現在でも見ることができます。
・品川富士(品川神社境内)
・千駄ヶ谷富士(鳩森八幡神社境内)
・下谷坂本富士(小野照崎神社境内)重要有形民俗文化財「下谷坂本の富士塚」
・江古田富士(茅原浅間神社境内)重要有形民俗文化財「江古田の富士塚」
・十条富士(十条冨士神社境内)
・音羽富士(護国寺境内)
・高松富士(富士浅間神社境内)重要有形民俗文化財「豊島長崎の富士塚」
江戸七富士は、現代でも地域の文化財として大切に保存されており、多くの人々に親しまれています。
霊験あらたかな富士山に見立てて作られた富士塚、全て巡ったら何かご利益がありそうな気がしますね!
まとめ
現代まで特別な山として様々な形で信仰の対象となる富士山。
富士登山は難しくても、少し足を延ばせばミニチュア富士「富士塚」には登ることができそうです。
登山の際には「1合目、2合目、3合目…」と、実際に富士登山をしているような気持で思いを込めて登るのがコツですよ!