【取材】味わい深いチャイとスパイスを使った焼き菓子。蔵前のチャイスタンド「ジュレー」でほっと一息

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お洒落なカフェや飲食店があちこちにあり、個性的なお店が立ち並ぶ蔵前。そんな蔵前に、チャイと焼き菓子を楽しめるお店があるのをご存知でしょうか。

いつも誰かの笑い声が聞こえてくるような、小さくて温かいお店、それが「JULLEY Chai stand and bake (ジュレー チャイ スタンド アンド ベイク)」。取材を通じて、そんな「JULLEY:ジュレー」の魅力に迫ります。




こだわりが詰まったインドスタイルのチャイ。

店名のJULLEY:ジュレーは北インドのラダック地方の挨拶の言葉です。

JULLEY

おはよう、おやすみ、こんにちは、ありがとうも全部「JULLEY」。

日本だと知らない人たちに挨拶することは少ないですが、ラダックでは人との距離が近く、すれ違う人に「JULLEY」と言うと「JULLEY」と返ってくるそう。
「その文化と響きが気に入っていること、ラダックが大好きだということもあってこの店名にしました。」そう話すのは、このお店の店主であるYukiさん。

「JULLEY」は、どの時間でも使えて様々な意味合いがある万能な言葉。このお店も色々な使い方をしてもらいたい、そんな意味もこの店名にこめられています。

何度もインドに行っているYukiさん。店内には、Yukiさんの大好きなラダックの写真が飾られています。「ラダックのことを知ったとき、いつか絶対行きたいと思っていて、初めて一人で長期の旅をしたときの最終目的地をラダックにしたんです。」

インドの人たちにとって、チャイ屋さんは憩いの場となっているそう。このお店も、幅広い年代の方がホッと一息ついて思い思いに楽しむ場所になっています。

元々バリスタをしていたYukiさんは、コーヒーを出すお店を開きたいと漠然と思っていました。

ですが、色々な状況が重なり、最終的にはチャイに辿り着いたそう。
「JULLEY」という店名も、チャイを出すことになったのも、振り返ってみると様々なことがYukiさんの経験した旅に繋がっているといいます。

このお店はオープンキッチンスタイルで、チャイを作るYukiさんと気軽にお話ができます。
人と話すことが好きで、以前働いていたカフェではホールを担当していたというYukiさん。

お菓子作りにも興味はあったけれど、厨房の奥で黙々とお菓子を作るのは性に合わないと感じていたそう。
だから今では、自分でお菓子を作り、かつお店でお客さんと話もできるこのスタイルがとても自分に合っているといいます。

チャイ作りは独学だったというYukiさん。
「小鍋で1,2杯分作るのと、大鍋でチャイを作るのは全く違うわけで。火加減の調整などに、最初はとても苦戦しました」自分が納得できる味になるまでに試行錯誤を重ねたそうです。

「インドに行ったときに路上でチャイを入れているおっちゃんをのぞき見しながら、しばらく側から離れませんでした」と笑います。

「インドのチャイは美味しいけど、日本で出すには甘すぎる。それに、インドでは小さいカップでチャイを飲むんです。小さいカップで飲むからその甘さでも美味しいけど、通常のカップはそれよりも大きい。だから、インドで飲んだ味そっくりそのままを目指したわけではありません。」とのこと。

ただ、インスピレーションを受けたのはインドのチャイなので、茶葉を煮出すというインドスタイルのチャイをつくっています。そして今でも、Yukiさんのチャイ作りの旅は続いているそう。

そんな、より美味しいチャイを目指し続けるYukiさんのつくるチャイをいただくことに。以前訪れたときマサラチャイをいただいたので、今回はラムチャイをいただきます。

鼻を近づけると、シナモンの匂いがふわっと広がります。

ピリッとしたラムと、それを優しく包むトッピングのホイップクリーム。鼻に抜けるスパイスの香りとほっこりする甘さが魅力的なチャイは、ふぅふぅしながらゆっくり味わいたい美味しさです。

定番のマサラチャイ以外にも、ラムチャイやカカオチャイといったメニューもあります。また、私が訪れたときは期間限定のベイリーズチャイもありました。

「昔は毎日コーヒーを飲んでいたけど、今では毎朝チャイを飲んで1日が始まっている。毎日チャイを飲むのが楽しみなんです」とほほ笑むYukiさん。そんなYukiさんのチャイを飲むと、お客さんの顔がホッと緩むのが見て取れました。

思わず目移り!種類豊富な焼き菓子たち

「JULLEY」にはチャイだけでなく、スパイスを使った焼き菓子も。

ずらりと並ぶお菓子を前に、どのお客さんも目を輝かせます。
「お店に入ったときに、お菓子がいっぱい並んでいるとときめくじゃないですか。だから、沢山お菓子を揃えておきたいんです。」
「お菓子作りは大変だけど、それを最大限楽しんでいます」とにこやかに語るYukiさん。

焼き菓子が大好きなYukiさんは、お店を開く前から漠然と、カウンターに沢山お菓子を置きたいと思っていたそうです。

ですが、元々お菓子のレシピがあったわけではなく、お店を開くことが決まってからレシピを考えたそう。

このお菓子にはこのスパイスが合うんじゃないかと、試作しながら徐々に今のスイーツを完成させていったYukiさん。

食べた瞬間ガツンとスパイスを感じるというよりも、ふわっと鼻から香りが抜けるくらいにスパイスを調整しているそう。

また、お店で出しているお菓子は定期的に自分で食べて、スパイスの量や焼き加減を少しずつ変えるなど微調整を重ねているんだとか。

「自分が美味しいと思うもの、自分で自信をもってお勧めできるものを作りたい」と話します。

こんなに種類があるので、どれにしようかお客さんが迷ってしまうこともしばしば。

「おすすめはどれですか」と聞かれると、Yukiさんはそのお客さんがどういうものが好きなのかを会話の中から見つけて、そのお客さんに合ったお菓子を提案しているそうです。

レモンとグリーンペッパー、あんずとジャスミン…焼き菓子とスパイスの意外な組み合わせ

「JULLEY」の焼き菓子の特徴は、スパイスと素材の個性的な組み合わせ。例えば、一番人気だという「レモンとグリーンペッパー」。

特に春夏は断トツ人気だったこちらは、意外性とグルテンフリーということが人気の理由です。「レモンとグリーンペッパー」が生まれたきっかけは、鍼灸院の先生との会話なんだとか。

「その先生が、昔お菓子屋さんでパイナップルとグリーンペッパーのお菓子を食べたら美味しかったと話していたんです。じゃあレモンケーキにグリーンペッパーを合わせたら良いんじゃないか?と思いついて。」

すでにレモンケーキのレシピは完成していましたが、そこにグリーンペッパーを加えてみたらとても美味しくなり、今では一番人気のスイーツとなりました。ちなみに、鍼灸院の先生も喜んでくれたそうです。

また、他にも珍しい組み合わせは「あんずとジャスミン」。「ラダックはあんずが名産。お店を出すときには、絶対にあんずの商品を出したいと思っていました。」ヒントとなったのはフレーバーティー。

あんず(アプリコット)のフレーバーティーをよく見かけるため、紅茶系のものとあんずを掛け合わせたいと思いついたそう。でもアールグレーだと普通過ぎるからジャスミンを合わせてみよう、とのことで誕生したんだとか。

常にアンテナを張ることを意識しているYukiさん。何気ない会話からお菓子作りのヒントを得ることもしばしば。
ですが、見たものや聞いたものをそのまま真似るのではなく、自分のアイデアを組み合わせてオリジナルなものを作っています。

また、お菓子作りでは三種類のオイルを使い分けるなど、美味しいお菓子を届けるために一切妥協をしないYukiさん。
映えさせたりバズらせたりするために奇をてらうようなことはせず、自分が毎日食べたいと思えるもの、オリジナリティがあるもの作り続けたい。そんなYukiさんの真摯な姿勢が、美味しいお菓子の秘密なのかもしれません。

チャイに合うスパムおにぎり?

最初は焼き菓子と飲み物というラインナップだったこちらのお店。ですが、今ではお食事系のメニューも楽しめます。

スパムおにぎり

ずらりと並ぶ焼き菓子たちの中で存在感を放つのは、なんとスパムおにぎり。なぜ、スパムおにぎり?

「お菓子とチャイだけだと、限られたお客さんにしか届かない。もともと食事も出すようなお店を作りたかったし、朝早くからオープンしているので朝食やブランチもやっていきたいと思っていたんです。そこで、小腹が空いたときに食べやすいものをと考え、スパムおにぎりもラインナップに加えました。」

せっかくスパイスを使った焼き菓子を出しているから、ということでスパムに合わせたのはクミンライス。強気にペッパーも振った、JULLEYらしさ満載のスパムおにぎりです。

また、このお店で隠れた人気を誇るのがあんチーズホットサンド。こちらはYukiさんのまかないから始まったそう。

「おやつとして、あんバタートーストにデュカ(中東のスパイス)を振って食べていたんです。最初はオープンサンドとして作っていたけど、商品化するにあたり、食べやすいホットサンド形式にしようと思って。じゃあバターより存在感あるクリームチーズを挟めばいいんじゃないか、となって誕生しました。」

私が訪れたときもあんチーズホットサンドを頼んでいる方がいらっしゃいました。オリジナリティあふれるホットサンドは是非イートインで。




長居したくなる心地良さ。チャイ片手に安らぐ憩いの場

多くのお客さんが温かいチャイを求めてやってきます。ですがせわしなさは無く、店内にはゆったりとした時間が流れます。

JULLEY:ベンチ

初対面のお客さんと一時間くらい話すこともあるというYukiさん。
「そういうときって不思議と他のお客さんが来なかったりするんです。意味のあるめぐりあわせだったと思える、そういう時間も必要なんだと思います。」常連の方もはじめましての方も、気さくなYukiさんとの会話を楽しんでいました。

初めて来た方でもほっとできる、気取らない雰囲気のお店。その温かさはそのまま、お店の内装やメニューはオープン当初から少しずつ変化を遂げてきました。

「常に変化をしていきたいんです」と語るYukiさん。それは、お客さんが飽きないようにするためという理由もありますが、何より自分たちが楽しむため。

自分たちが楽しんでいたらそれがお客さんに伝わる。そんなYukiさんの醸し出すハッピーな雰囲気が沢山の人を惹きつけているようです。

チャイが飲みたいとき、甘いものが恋しいとき、何となく誰かと話したいとき…「JULLEY!」と言ってドアを開ければ、チャイとお菓子とYukiさんが温かく迎えてくれますよ。


JULLEY Chai stand and bake
(ジュレー チャイ スタンド アンド ベイク)
住所:東京都台東区蔵前3丁目22−5
アクセス:大江戸線蔵前駅 A5出口 徒歩1分
営業時間:8:00 〜 16:00(木、金)
9:00 〜 17:00(土、日、祝)
https://julley-spice.com/

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ライター紹介

かくに

フリーライター

出身は北海道。 初めてのひとり旅はクロアチア(初海外)。 方向音痴。 食べることが大好き。 一人ご飯も大好き。 好物はスープカレーと豚の角煮と抹茶。
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