上野駅構内にある、ハードロックカフェ上野駅東京。有名なアップルコブラーは、これぞスイーツという味を楽しめる
アップルケーキの季節が始まると、
彼女は、無口になった。
店内には、1980年代のマイケル・ジャクソンの名曲、スリラーが流れていた。
マイケル・ジャクソンは、僕たちの世代では、神である。
その卓越した超テクのダンスパフォーマンスは、1980年から1990年代にかけて、世界中の人々の目を釘付けにした。
僕は、いま、音楽仲間の彼女と想い出のスイーツを味わうために、ハードロックカフェ上野駅東京に着いた。
彼女にとっても、マイケル・ジャクソンはやはり神だった。
上野駅構内の中央改札から、広小路へ向かう途中にある、ハードロックカフェ上野駅東京。
若いころ彼女は、ハードロックカフェで、音楽&スィーツ・デートを楽しんだらしい。
当時、恋の相手だった彼は、ハードロックカフェのアップルケーキ、アップルコブラーが大好きだったと言う。
秋から冬にかけて、りんごの季節が始まると、必ずアップルコブラーをお店でオーダーした。
温かいフアフアのアップルケーキの上に、ビッグサイズのアイスクリームが配置され、その上に濃厚なキャラメルソースがたっぷりとかけられていて。
温かいアップルケーキと冷たいアイスクリームとの、絶妙な味わいが魅力のスイーツだ。
僕と彼女は、店内の席につくと、アップルコブラーをオーダーした。
「彼も、音楽をやっていたの。いつもマイケルについて、熱く語りあったんだ。恋には、共通の話題って大切ね。今でも、りんごの季節が始まると、彼を想い出すの。ハードロックカフェにひとりでやってきて、彼との懐かしい恋の想い出の中に入って過ごすの。切なかったこと、泣きたくなったこと、逢いたいけど逢えなかったことを想い出していると、胸がいっぱいになって、悲しくなって、言葉が出てこないの。」
恋をしていた話に浸っていると、お店の人がさりげなく2つのアップルコブラーをテーブルに運んできた。
アイスクリームの溶け具合をみて、素早くスプーンを手に取る。
冷たいアイスクリームをお口に運ぶ。
やわらかいアイスクリームがお口の中で、急速に溶けていく。
アイスの甘い波が広がる。
次は、スライスしたアップルをスプーンですくう。
お口に運ぶと、独特のアップルの香りが踊る。
テーブルの近くで、偉大な伝説のシンガー、レイ・チャールズの顔が微笑んでいる。
マイケル・ジャクソンも踊っている。
ハードロックカフェ内では、マイケル・ジャクソンをはじめレイ・チャールズやエルビス・プレスリー、マドンナ、ティナ・ターナーなど、さまざまなミュージシャンの秘蔵品が展示されている。
店内の音楽が、マイケル・ジャクソンの今夜はビート・イットに変わった。
彼女は、目を閉じた。
こころの中で昔の彼と逢っているのだ。
昔の彼も、時間をこえて、彼女にやさしく微笑んでほしい。恋の想い出は、いつも悲しくて切ない。
彼女の恋は、18歳で時間が止まっている。
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