【取材】浅草「大黒家天麩羅」老舗の味を守り続ける五代目の想いに迫る
浅草・伝法院通りで、明治20年から営業続ける天麩羅の名店「大黒家天麩羅」。
創業から138年、代々受け継がれてきた味と変わらないおもてなしで、今も多くの人々に愛されています。
今回は、五代目店主の丸山力三さんに、お店の歴史やこだわり、そして浅草で長く愛され続ける理由などについてお話を伺いました!
大黒家天麩羅 五代目 丸山力三さんにインタビュー!
「大黒家天麩羅さまの歴史について教えてください。」
明治20年に創業し、今年で138年目になります。
もともとは蕎麦屋として開店したお店でしたが、明治の末に天麩羅屋として業態を変えて現在の形になりました。
私のひいひいおじいさんが〝丸山弘方〟という方で、京都でお侍さんをしていたんです。
江戸時代が終わって明治になると、天皇陛下が京都から東京にいらっしゃいますよね。
その際、お公家さんを警護していた関係で、一緒に東京へ来たんですよ。
その後、浅草北部にあった〝三条実美〟さんのお屋敷で秘書として働くようになり、ご縁があって蕎麦屋の大黒家の養子に入りまして、そこから「大黒家天麩羅」の歴史が始まっています。
「力三さんが五代目に襲名するまでの流れについて教えてください。」
特に小さいころから「これをやりなさい」と言われていたわけでもなくて、自然と家業を継ぎたいなと思うようになりました。
学校を卒業してからは大手の飲食店さんにお世話になって、その後「大黒家天麩羅」に戻ってきました。
デパートなどで催事があると、地方に出向いて販売をすることも多く、経験を積みながらお店のことを学んでいって…。
そうした流れで「大黒家天麩羅」五代目に襲名することになりました。
「天ぷらメニューの特徴について教えてください。」
まず魚介だけを使っているというのが特徴です。
さらに、天丼のたれは代々受け継がれる“秘伝のレシピ”があるんですよ。
大げさに言うと、一子相伝のようなものですね。
明治20年の創業当初から、一切作り方や製法を変えていません。
店主がそれを作るときは、必ず人払いをしてから作業に入るんです。
誰にも見せない、教えない、メモにも残さない。すべて頭の中で覚えて、決して口外してはいけない。
そういう伝統の製法が、今もずっと受け継がれています。
「ほかの天麩羅屋さんとの違いを教えてください。」
召し上がっていただくとすぐにわかると思うんですが、ほかの天麩羅屋さんと違って、うちのおつゆは少し濃いんですよ。
それから、天麩羅の“サイズ感”にもこだわっています。
ひとつひとつを少し大きめにしていて、食べごたえを感じていただけるようにしています。
また、他店では海老を揚げるときにくるっと丸めることが多いんですが、うちでは棒のまま揚げる“棒揚げ”で提供しています。
もともと蕎麦屋から発展したお店なので、その名残が今も形として残っているんです。
「天麩羅で使っている素材のこだわりはありますか?」
私たちは油を作ったり、お米を作ったり、魚を釣ったり…そういうことはできません。
取引している業者さんのことを、うちでは「お荷主様」と呼んでいるんです。
「お荷主様」が、このお店に良い素材を運んできてくださる。
僕らはその素材を最大限に生かして、美味しく調理する。それが基本だと思っています。
「浅草で長く愛され続けている秘訣を教えてください。」
このあたりのお店はどこもそうだと思うんですが、やっぱり“浅草寺様様”なんですよね。
うちも「大黒家」という名前を使わせていただいていますが、浅草寺には大黒天さまが祀られていて、そこから名前をいただいたんです。
さらに、“屋”ではなく“家”という漢字を使っているのは、ご来店くださるお客様に『お家のようにくつろいでいただけるように』という想いを込めているからなんです。
浅草とのご縁や、“家”に込めた気持ちが、今もお客様に愛される理由なのかもしれません。
「これまで営業してきた中で大変だったことや苦労したことを教えてください」
コロナ禍のときは、やはり大変でしたね。
大黒家の前にある伝法院通りは、普段は人通りがとても多いんです。
ですが、コロナ禍には伝法院通りも仲見世通りも本当に人がいない状態になっていまして。
一日にお店の扉が開くのが、数回という日もありました。
お弁当の販売などをしながらなんとか凌いでいましたが、今はまたお客様が戻ってきてくださって、本当にありがたいです。
「やりがいを感じる瞬間を教えてください」
私は多くのお客様と対面して、直接「美味しかったよ」とか「また来るね」と言っていただけることが本当にありがたいんです。
そういったお言葉をいただけると、お店全体の雰囲気も明るくなりますし、従業員一人ひとりのやる気やモチベーションにも繋がっていると思います。
「客層を教えてください 。」
老若男女、そして海外からいらっしゃる方も多いですね。
うちは本当に何世代にもわたって通ってくださるお客様が多いんです。
90代の方が来店されたときに、「ここは小さい頃におじいさんに連れてきてもらったんだ」とお話しくださることもありました。
そうやって小さい頃に来てくださった方が、今度はお孫さんを連れて来てくださる、そんなふうに代々続いているお店なんです。
「宣伝方法や集客方法について教えてください。」
昔から続けているお店ということもあって、ありがたいことに口コミで来てくださるお客様が多いんです。
ですので、特別こちらから仕掛けを作って宣伝するということは、あまりしていません。
ただ、メディアの方に取材をしていただくことはありますね。
また、漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の中で「大黒家」が登場するシーンがありまして、その影響で、こち亀ファンの方が聖地巡礼のように訪れてくださることもあるんですよ。
「今後の目標や施策について教えてください。」
コロナ禍を経験して、あらためて“何世代にもわたって通ってくださっているお客様”の大切さを実感しました。
これからも『昔からの大黒家なんだ』と思っていただけるように、変わらない努力を続けていきたいと思っています。
そして、“変わらない魅力”を大切にしながらも、時代に合わせて変えていくべきところはしっかりと変えていく。
そうやって、私が受け取ったこのバトンを、次の世代へとしっかり渡していきたいと思っています。
浅草で愛され続けている大黒家天麩羅のメニューを実食!
浅草で長く愛され続けている「大黒家天麩羅」のメニューを実食させていただきました!

海老、キス、かき揚げが乗った大「天丼」。
香り高い最高級のごま油で揚げ、代々受け継がれてきた秘伝のつゆにくぐらせて仕上げています。
つゆがしっかり染み込んだ衣は、しっとりとした食感。
ごはんにも旨みがじんわりと染みわたり、甘辛い味わいが口いっぱいに広がります。
やさしい味わいで自然と箸が進みました!

贅沢に海老が4本のった「海老天丼」。
炊きたてのごはんに、ぷりっと揚がった海老天が並ぶ姿は圧巻です。
しっとりとした衣の口あたりとぷりぷり食感のコントラストがたまりません!
つゆがしっかり染みたごはんとともに食べ進めるほど幸せが広がります。
海老好きの方にぜひ味わっていただきたい1杯です。

とろみのある甘辛いつゆにふんわりたまごを合わせたかき玉わん。
おろししょうがのさっぱり感がほどよく効いて、食べると体があたたまり、ホッとする味わいです!
だしの旨みとたまごのまろやかさが絶妙に絡み合い、心もお腹も満たされます。
\インタビュー&天麩羅の実食レポの様子はこちら/
まとめ
明治時代から浅草の風景に溶け込み、今も愛され続けている「大黒家天麩羅」。
力三さんの“変わらない努力”という言葉が印象的でした。
これからも、地元の人にも観光客にも親しまれる天麩羅の味でたくさんの人を笑顔にするはずです。
みなさんも、浅草に足を運んだ際は、ぜひ「大黒家天麩羅」のメニューを味わってみてください!










